サイトマップ キーワード検索
文字サイズ
京都府医師会組織・事業
京都府内地区医師会案内
特定健診・特定保健指導
健康づくり情報
京都府医師会在宅医療支援センター
がん登録
日本の医療の問題
イベント情報
医療サービス案内
府内AED設置場所
感染症情報
子育て情報
花粉情報
介護保険情報
知って欲しい病気の知識 広報紙Be Well
京都府医師会看護専門学校の案内
HOME > イベント情報 > これからの日本の医療を考える集い

イベント情報

京都府医師会 主催

              
「今の医療、こんなんで委員会」シンポジウム
  妊婦のエチケット 医者のマナー
 多数のご参加 ありがとうございました!!
「今の医療、こんなんで委員会」シンポジウムが、3月28日(土)京都新聞文化ホールにて開催され、67名の一般府民の参加があった。
 「今の医療、こんなんで委員会」は、現在の医療が直面する諸問題を政策レベルではなく、現場レベルで検討するという趣旨により医療関係者、一般府民、マスコミ関係者により構成され、昨年7月に設立された委員会で、これまで9回にわたり活発な議論が繰り広げられてきた。
 今回、これまでの議論を受けて、医師不足等で問題となっている産科に限定したシンポジウムを企画し、医療の現場に必要な信頼関係やエチケット、マナーについて、来場者とともに考え、意見や要望を聞く機会として開催した。
 司会の橋本府医理事による委員会発足趣旨説明に引き続き、森府医会長が「医療の信頼のゆらぎが話題になっており、医療の質と安全性をより高めて信頼を回復していかなければならないと考えている。医療は患者と医療関係者がチームとなって取り組んでいかなければならない時代に来ているが、そのためにも府医としては医療者側の立場としてだけではなく、広く多くの人々の声を聞いて医療の充実に努めたいと考えている。今回、ひとつの試みとしてこのようなシンポジウムを開催した。今後もこのような取り組みを継続的に行い、多くの府民・市民の声を聞いていきたいと思っており、この機会にぜひ積極的な発言をお願いしたい」と挨拶をした。

第1部 講演「医療とコミュニケーション」余語 真夫氏(同志社大学心理学部教授)

 医療と安全がクローズアップされている。医療というものは科学技術と経験知の結晶である。日本の医療水準は世界のトップクラスであり、世界で最も安全にお産ができる国だ。その医療を享受できる日本人は幸せでもあるが不幸でもある。不幸の原因として、現在の高い医療水準を「当たり前のこと」とする認識が広く浸透してしまっていることがあげられ、病気は必ず治る、赤ちゃんは無事産まれるなどの「安全神話」と言われる思い込みが形成されている。実際には世界のトップクラスといえども、医療を含むあらゆる科学技術においても「ゼロリスク」はあり得ないが、その認識が社会全般には広がらない。
 最高の医療知識や技術があり、優秀な医師や看護師が揃っていてもその能力を最大限に発揮させるには人が揃っているだけではだめで、優れた政策、優れたシステム、経済的な資源が必要。政策システムの欠陥が医療トラブルを引き起こしているという側面も見逃すことが出来ない。
 いつの頃からか「医療=サービス産業」というあり方になっている部分もある。患者をお客さんとみなし、お客さんだから最高のサービスを提供する。患者を「患者様」と呼ぶのがその最たるものだが違和感を感じる。
 医療崩壊の要因の一つに医療提供者と受診者の関係があると言われている。医療は健康の維持・増進、病気の治療、生命延長という点で他の手段よりも格段に優れているが、不確実性というリスクを多大にはらんでいる。したがって受診者は医師を「信頼」するしかない。「信頼」というものは、完璧な世界にその概念はない。医療に「信頼」が欠かせないのは、医療が不完全で不安定なものだからである。過去から「信頼」によって医療が形成されてきたが、医療だけでなく社会全体にも言えることであるが、医療崩壊が起こっているのは人間関係のあり方に変化が起こっているからと思われる。
 医師は医療行為を遂行する上で患者の協力を必要とする。そのためには高度なコミュニケーション能力が必要とされる。実際、「コミュニケーション能力が低い」と非難される医療スタッフも中にはいるが、医学教育の変化もあってか、能力はかなり高まってきている。
 診察結果、治療戦術、戦略などを患者や家族に伝達し理解させるコミュニケーションが求められる。患者が理解できない高度な内容のものも理解力に応じて説明しなければならない。一人の患者に割り当てられる時間にも限りがあるため、短時間で誤解の無いように伝えなければならない。医学的なことだけでなく、患者の懸念、不安、期待、望みなど患者の気持ちや考えを出来る限り正確に読み取ることが求められる。日常生活においてもそうであるが、人の気持ちや考えを読み取るということはかなり難しいことだ。それは気持ちや考えが全て言葉で表されているわけではないからだ。何回か話しているうちに考えが変わってしまうこともある。医師の問いによっても患者の答えが変わるという面もある。医師は患者の不安を軽減しつつ、最適な処置を提案し、医療への患者の協力と意欲を動機付ける働きかけを継続しなければならない。
 医療におけるコミュニケーションが難しい理由がもう1点ある。医師が最善の努力をしても患者やその家族にコミュニケーション能力が不足していると医師の話を誤解したり、言動を否定的に受け取ったり、説明が不十分であると考えたり、場合によっては誠実さがない、悪意があると受け取られる。必ずしも医師だけに問題があるわけではなく患者側にも問題がある場合もある。
 医師は患者や家族が、医師に何を期待しているのかを把握し、その期待が自分の提供できることと乖離しているならば患者の期待を実現可能な期待に修正し、診断・治療を実施するべきである。「任せなさい」という言葉は、後で「期待はずれ」という言葉に変わってしまう。期待に沿わない結果が生じると「信頼を裏切られた」「やぶ医者だ」「不誠実だ」という非難を浴びせられることもある。
 医師や医療機関は「信頼される医療」を掲げているが、「私のことを信頼してください」という発言は言えば言うほど無意味である。「信頼」は患者が医師や医療機関に対して形成する心情であって、医師や医療機関がアピールして形成されるものではない。
 医療者側と患者側が対立する構図では理想的な医療は行われない。現実では難しいかもしれないが、お互いに向き合うのではなく、共通の目標である「生」を全うできるような心掛けが諸問題を解決するのである。

第2部 シンポジウム

 「今の医療、こんなんで委員会」の関委員長と名和委員が座長を務め、各シンポジストがそれぞれの立場で、産科医療について現状の説明や考えを発言した。
 ◇座    長   関   透(下西)
            名和 正訓(東山)
 ◇シンポジスト  産科医師(第二足立病院院長 大坪一夫氏)
            助産師(足立病院看護部長 秋葉秀美氏)
            一般府民(医療サポーター養成所代表 山根希美氏)
            マスコミ関係者(京都新聞社文化報道部次長 栗山圭子氏)
・産科医師(第二足立病院院長 大坪一夫氏)
 医療崩壊の現状を制度と政策の方向から発言する。とにかく医師が足りない。決して悪いことではないが女性の医師が増加している。
  先進諸国の中でも医師数は最低ランク。国内においては、産科医師、分娩施設数ともに激減している。また、女性医師が増加しているが、出産・子育て等で現場を離れてしまう。現場への復帰率は50%程度になり、産科医師が不足するのは明らかである。将来的に誰が産科医療を担うのか大変な問題である。
 また、横浜の事件以来、マスコミの論調が圧倒的に医師バッシングに傾いているが、マスコミの報道数と連動するように医療訴訟の件数も増加している。産科の事故件数は少ないにもかかわらず訴えられる率が非常に高い。その要因は産科医療の絶対的な安全神話に基づくと考えられる。 訴訟されたくないために、萎縮した医療となり、患者側はより良い医療を受けにくくなるというマイナス面が浮かび上がる。
  以前、脳内出血を起こされた妊婦を何とか脳外科に収容し、自分が帝王切開を行って赤ちゃんは生まれたが、残念ながら母体は亡くなるという事例があった。赤ちゃんは、自分の病院の新生児室で3か月になるまで育て、退院するときは病院スタッフも泣いていた。出来る限りのことはしたし、誠心誠意対応していた病院の姿勢を見てくれていたためか訴えられることもなかった。悪い結果になっても、信頼関係ができていれば訴訟にならないこともあるという例だ。
 やはり医師と患者の信頼関係はとても大事なこと。普段から作っていくことが必要で双方の第一印象によって構築される。患者さんの目をしっかり見て話をすることが大切だ。患者が安心して診察を受けられる雰囲気作りも大切。検査においても、検査の必要性を患者が納得いくまで説明しなければならない。医療は投げかけるだけではだめで、お互いがパートナーとなってより良い安全な医療を目指す必要がある。
・助産師(足立病院看護部長 秋葉秀美氏)
 産科医と同様、助産師も減り続けている。大学を出た後、病院に勤務する助産師の人数はそれほど多くない。また、統計上に表れている内、その約半数が潜在助産師であり、その少ない助産師も、結婚や自分の妊娠出産で退職してしまい、お産の現場を離れると戻るのが怖くなって、母乳指導や新生児訪問などに行ってしまうことが多い。そのため、どこの病院でも助産師は不足し、その確保に頭を悩ませているのが現状だ。
 助産師の役割としては、医師不足ということもあり、正常な分娩に関しては医師との連携の下で助産師主導の分娩をやっていく方向になってきている。足立病院では、昨年から院内助産院のシステムを構築した。このシステムは患者とのコミュニケーションがスムーズに取れるので良いシステムであるが、助産師のスキルアップもかなり求められるものでもある。経験知のある助産師が現場に残っていないということもあり課題は多い。
 足立病院では、年間1400例すべての分娩にバースプランを出してもらっている。患者側の要望を取り入れた良いものである半面、母体の状況からすれば無理だと思われるような難題を出す患者も出てくる。1例を挙げると、自然分娩、母乳育児を希望していた患者が、促進剤を投与するか帝王切開しかない選択を迫られた状況になった時、助産師が親身になって説明を行い、寄り添いながら、本人が自らの判断で帝王切開を選択し、無事に出産した事例がある。母乳もなかなか出ず、入院中はミルクでの育児であった。退院後にも母乳外来に通うなどされ、今は希望通りの完全母乳で育てている。バースプラン通りにはいかなくても、妊娠中からコミュニケーションを密にとって、本人や家族と信頼関係を築いた結果、とても満足されたケースだ。ただ、高年齢化に伴いハイリスクな出産も増え、プラン通りにいかないケースもあり、過剰なクレームや、ときに暴言・暴力を引き起こすこともあるなど、管理職としてその対応に苦慮しているのも現状である。
・一般府民(医療サポーター養成所代表 山根希美氏)
 私自身、9年前に長女を出産したとき、テレビや新聞で「たらいまわし」と言われている経験をした。自宅で突然に大量の出血をし、一旦入院した個人病院から設備の整った大きな病院に搬送されることになったが、受け入れ先の病院がなかなかみつからず、4時間近く経ってようやく市内の大学病院に搬送され、緊急帝王切開で長女を出産した。
 「常位胎盤早期剥離」という順調に経過している妊娠中に、突然、赤ちゃんが生まれるより先に胎盤がはがれるとても危険な病気で、妊婦全体に対して、およそ1%の確率で起こると言われている。母子ともに無事に退院することができたが、この経験から私は、産科医療に関心を持つようになり、1年後に、自宅にネット環境が整うと、医療関連のサイトや掲示板に参加するようになった。
 私が経験した「たらいまわし」といわれている救急患者の受け入れ不能や、医師不足による連続30時間以上の過酷な勤務、医療訴訟の増加による現場の萎縮など、現在言われている問題のほとんどがすでに存在していた。
 私自身も経験したことについて調べたり質問したりしていたが、ある医療者の方から「常位胎盤早期剥離は予測不能で、貴方や子どもが無事に助かったのは、かかりつけの医師の手当てや判断が正しかったことと、受け入れてくれた病院のおかげなのだから感謝するべきである。今になって調べているのは、裁判でも起こすつもりなのか」と責められ、その言葉には強いショックを受けた。
 しかし、その気持ちは、医療の現実や実情を知るうちに、変わっていった。「訴える」という言葉で深く傷ついていたのは、私たち患者側だけでなく、医療者も同じだとわかったからだ。
 医療事故について民事裁判で争う医療訴訟は、医療事故にあった患者や家族の立場で見れば、真実を知りたい、問題点は明らかにして改善していってほしいという願いを託せる唯一の方法であるが、事故について何も解明されていないうちに、偏った報道によって被告である医師や病院側を「悪者」であるようなイメージが定着されてしまうことは、被告側の名誉を傷つけるだけでなく、国民に医療不信を植え付けてしまう危険がある。また、原告であるご本人やご遺族への悪辣なバッシングも許されることではないが、争う立場になれば避けることは困難だ。そうして、患者側も医療者側も互いに疲弊し、さらに傷も溝も深めてしまっているのが現実ではないかと思う。
 本来、私たちが戦う相手は、病気や傷であり、医療者と患者は一緒に戦うパートナーであるはず。私たちがしなくてはいけないことは、対決でも対立でもなく、対話であり、相手の話に共感を持って耳を傾けることなのだと考えるようになった。医療者の中にも同じ考えをもち、対立の構造を抜け出そうと呼びかける人が増え、私もネットを通じて多くの人たちと出会うことができた。
 その一人が、今日ご紹介する「妊娠の心得」を作られた宋美玄先生。宋先生は現役の産婦人科医。以前からご自身のブログで、祝福されるはずの出産で赤ちゃんやお母さんが亡くなったり、重い後遺症が残ると自分たち医師もとても悲しいし、本当にどうしても救えなかったのか、他に方法は無かったのかを何度も議論したり、シミュレーションを繰り返して検証しているが、それでも赤ちゃんや妊婦の死亡はゼロにはならない。出産は、現在でも危険を伴うもので、100%の安全は保証できないのに、不幸な結果になると、裁判になったり、警察によって医療者が逮捕されることで、医師不足が加速し、受け入れ不能の病院をさらに増やすことになり、本来なら救える命さえも救えなくなってしまっている現実を多くの人に知って欲しい、という産科医としての思いを書き綴っておられた。そして、未受診の飛び込み分娩や脳出血を起こした妊婦の受け入れ拒否のニュースをうけて、出産のリスクや、妊娠中には、赤ちゃんの安全と健康第一に考えて欲しいという思いを伝えるためにこの「妊娠の心得」を作られたのです。
 ただ、医療者側が一方的に、理解を求めるだけでは信頼関係を取り戻すことは出来ない。医療者側も知識や技術をさらに高める努力を約束することを忘れてはいけないし、この心得についても、色々な年齢層や立場の人たちと広く意見を出し合って、もっと良いものにしていきたいと述べられている。
*妊娠の心得11か条(下記別途掲載)
 この「妊娠の心得」は、決して完全なものではない。人によって、そのとおりだと思う人もいるし、現代に合わないと思う人もいるだろう。
 宋先生が、「妊娠の心得」で、リスクや現実の理解を求めるとともに、より多くの命を救うための努力を続けることを約束してくださるように、私たちも、受け入れ不能の起きないシステム作りや医療の向上を望むとともに、医療は完全ではない、リスクをゼロにすることはできないという現実を受け止め、理解しなければならない。
 リスクを理解するということは、とても難しいことだ。たとえば、私が経験した常位胎盤早期剥離は、およそ1%の確率で起こるということは、本などにも載っているし、知識として知っている人は多いと思うが、そんな低い確率のことは自分には起きないと考えているのではないだろうか。
 そして、その1%に入ってしまった時に、その現実を体験して、1%でも0.1%でも、0でない限り、自分や自分の家族にも起こるのだと初めて実感するのだと思う。
 今年から、重度の脳性麻痺の子供を対象にして、医療者の過失の有無にかかわらず3000万円が支払われる産科無過失補償制度が始まった。これは、分娩に際して重度の脳性麻痺になった子どもに対しての制度であり、様々な問題があります。その一つに妊婦死亡が支給対象から除外されていることだ。福島県立大野病院事件で被告医師を支援した「産科医療崩壊を食い止める会」では、被告医師の無罪確定後すぐ、「妊産婦死亡された方の家族を支援するための募金活動」を始めた。母親のいない家庭では、慣れない赤ちゃんのお世話も大変だが、父子家庭は母子家庭よりもさらに公的支援が乏しく、経済的にも身体的にも非常に困窮している。この募金活動は、金銭的な支援だけでなく、既存の福祉施設や制度との橋渡しや、遺族の悲しみを癒し支える「グリーフケア」なども取り入れることを目的としている。
 このように、訴訟という方法をとらなくても、患者も医療者も救われ、再発の防止もできるようにという取り組みがいくつか始まっているが、やはり大切なのは、私たちひとりひとりの意識の有り様だと思う。不当な要求や困った振る舞いをする患者や家族も少なくないと思うが、間違った知識や情報不足が原因になっていることも多いのではないかと思う。賢い妊婦はやがて賢い母親になり、いずれ頼もしい介護の担い手になる。
 これからの日本の医療を支え、医療資源を守り育てていくサポーター養成のため、お忙しい毎日ではあるが、ご協力いただききたい。
・マスコミ関係者(京都新聞社文化報道部次長 栗山圭子氏)
 医療の現状は医療者側にとっても患者側にとっても非常に厳しい状況が続いている。福島県立大野病院事件により、医師が逮捕されたことが医師の意欲を著しく低下させたと言われている。また、その後の奈良県大淀町の妊婦が19ヵ所の病院で受け入れられずに、出産後死亡に至った事件をマスコミが「たらいまわし」と表現したことによって、産科医療の崩壊を加速させたとの医療現場からの声も聞く。その後も東京や、北海道でと続いたが、その度に「たらいまわし」という表現を使っていた。個人的な意見であるが「たらいまわし」という言葉の使い方は不適切であるかもしれない。「たらいまわし」というのは責任を持って処理せずに次に送るということであるが、医療の現場で起こっていることは、受け入れたくても受け入れることが出来ない「受け入れ不能」であることは理解している。
 本日、奈良県で仕事中に倒れた男性の救急搬送を6か所の病院が受け入れを断り、その後死亡した事件があったが、「搬送不能」という表現をしていた新聞があった。
 しかし、受け入れてもらえなかった患者の立場でみれば、「たらいまわし」であろうと「受け入れ不能」であろうと「搬送不能」であろうと状況としては同じことで、患者側の気持ちを医師がどれだけ感じてくれるかということの重要性を理解してほしい。
 自分の母親としての経験だが、子どもが1歳半の時に高熱を出し、かかりつけ医が休診であったことから、家で手当てをしていたが熱が下がらず、止むを得ず、自宅近くの行ったことのない「小児科・内科」の看板を掲げている診療所に行ったことがあった。ところが受付で「そんなに高い熱の子供は診られない」と即座に断られた。その時に医師が奥から顔だけでも出してくれていたら良かったのに、顔も見せずに受付の人が「そんなに高い熱は診られないと言っています」と言われただけだったので非常に不信感を持った。ただ、不満である一方、「診られない」とはっきり言われたことと、他医も紹介してもらい、子どもの病状も問題なかったため、結果としては良かったと言える。結果として良かったとしても、それは後の話であって、たとえ診られなくても、顔を見せてお話をいただいたら、それだけで安心感が得られるので、人と人とのつながりというものがとても大事であるということを痛感した。医療者側には安心感を与える医療というものを望んでいきたい。逆に患者側としても、最低限のルールは求められるべきである。
 昔からお産は病気ではないと言われているし、私自身もそう思っている。周産期医療が日々進歩するとともにリスクも減ってきている。そのため、そのリスクが自分自身に振りかかるとは誰しもが思わないだろう。自分の妊婦時のことを思い出しても、妊婦健診の際に医師からリスクの説明を受けた記憶がない。そのような話は繰り返して伝える必要がある。病気ではないと分かっていても妊婦健診をきっちり受けることが、妊婦にとっての最低限のルールだと思う。
 滋賀県では人口10万人当りの産婦人科医の人数が全国で最も少ないが、出産に伴う合併症等のリスクを妊婦が自らチェックする手段として「初期妊娠リスクスコア自己評価表」を母子健康手帳とともに配布しているそうだ。これは、年齢、お産の経験や、飲酒喫煙の習慣などをチェックし、ある点数以上の妊婦は「ハイリスク」として、他科との連携が取れる総合病院での受診を誘導するもので、全県での取組みが行われている。
 いずれにしても、命に関わることなので妊婦は自覚をもって健康管理すべきだろう。また、医療者側とは同じ方向を向いて、双方が日頃からしっかり向き合ってより良い関係を築いていくべきである。
*-----*-----*-----*-----*-----*-----*-----*-----*-----*-----*-----*
 シンポジストの発言終了後、フロアから意見要望を募り、「出産は特別なことではない。痛いのは当たり前であり、1人で産むものであるのに過保護にし過ぎだ。もう少し妊婦に対する教育が必要」、「医療崩壊は経済的な資源の問題で、お金と人さえあれば1年程度で解消できる」、「医者は患者に対して十分説明しているつもりであっても患者側からすればまだまだ不十分だ。それに気づいていない」などの意見が出た。

<妊婦の心得11か条>(PDFはこちら)
1.セックスをしたら妊娠します。
 この世に100%避妊する方法は、セックスをしない以外にありません。(ピルですら100%ではありません。でも、もちろん避妊することは、望まぬ妊娠を大幅に減らすことが出来るので、妊娠したくない人は必ず避妊しましょう!!)
 日頃セックスをしているなら、常に妊娠の可能性を考えましょう。
 そして、子供が欲しいと思っているなら、赤ちゃんの神経系の病気(二分脊椎など)を防ぐために葉酸のサプリメントを飲みましょう。(1日0.4mg)
2.「この男の子供を産むためなら死んでもいい!」と思うような男の子供しか妊娠してはいけません。
 妊娠出産は何が起こるかわかりません。妊娠高血圧症候群(妊娠中毒症)、妊娠糖尿病など、妊娠にまつわる病気になるかもしれません。また、お産も体にとっては大きな負担となります。
 毎年、約60人の妊婦が出産で死亡しています。あなたが生きて出産を終える保証はどこにもありません。
 妊娠をするにはそれなりの覚悟が必要ですよ!(妊娠はよく考えて、覚悟を持って!、というたとえでシングルマザーなどの選択を否定するものではありません。)
3.妊娠しただけでは喜ばない。安易に他人に言わない。
 妊娠が非常に初期に診断されるようになってから、妊娠初期の流産が15%以上と非常に多いことがわかりました。
 最低でも妊娠4ヶ月に入るまでは手放しで喜んではいけません。職場で仕事を軽くしてもらいたいと上司にお願いするなど重要な時だけ人に言いましょう。
 出来ることは赤ちゃんを信じてあげることだけ。
 また、運悪く15%に入っても、あなたのせいじゃありません。不必要に自分を責めないでくださいね。
4.神様から授かったら、それがどんな赤ちゃんでも、あなたの赤ちゃんです。
 この世に完全に正常な人間なんていません。重いものから軽いものまでいろんな障害を持って生まれてくる赤ちゃんもたくさんいます。
  妊娠中に診断できる異常はごく一部。中には幼児になってからわかる異常もあります。
 誰しも自分の赤ちゃんが正常だという保証のもと、出産することなんて出来ません。
 親になるということは、どんな赤ちゃんが生まれても自分の子供として受け入れることです。
5.産む、産まないは自分たち夫婦で決めましょう。
 とはいえ、妊娠中に赤ちゃんの異常や、もしかしたら異常があるかもしれないというサインがあると主治医に告げられるかもしれません。
 それが中期(妊娠21週まで)であれば、望んだ妊娠であっても異常の程度によっては中絶という選択肢が出て来る場合もありますが、あくまでも夫婦二人でよく話し合って決めましょう。価値観や考え方は人それぞれ。大事なことは責任を持って自分たちで決めましょう。(大事なことを責任を持って決められる大人になってから妊娠しましょう。)
 また、このことについては妊娠前から二人で話し合っておくべきです。
6.かかりつけ医をもちましょう。
 当然ですが、ちゃんと妊婦健診を受けましょう。
 きちんと初期に超音波で予定日を決めること、HIV、B型肝炎、血液型、梅毒などの初期検査を受けることは、妊娠中に管理方針を決めるのに後々重要であったり、あなたの赤ちゃんを守ったりするために必要です。また妊娠高血圧症候群(妊娠中毒症)の早期発見には欠かせません。
 もしあなたにお金がなくても、自治体が発行する母子手帳には最低限の妊婦健診を受けるためのチケットがついていますし、分娩費用も援助してくれる制度があります。
 また、産科医不足からお産を出来る場所が限られています。妊娠が分かったら、病院などに早めに問い合わせてお産をする場所を確保しましょう。里帰りしようなどと思っていても、受け入れてくれる場所がないかもしれません。
7.赤ちゃんは全ての運命をあなたに預けていることを忘れないで。
 赤ちゃんは栄養や酸素など、生きて成長するために必要なものを全てあなたに依存しています。お母さんが煙草やお酒など赤ちゃんにとって毒となるものを摂取すると、胎盤を通して赤ちゃんに移行します。
 体型を気にして、妊娠中にダイエットをするなどはもってのほか。(妊娠前に標準的な体重だった人は9〜12キロ体重を増やさなくてはいけません。)
 煙草が我慢できないような人は、お母さんになる資格はありません。
 また、「出産したら遊べなくなるから」と旅行をするのもいいですが、何かあっても後悔しない程度に。旅先で何かあってもすぐに診てくれるところがあるかは最低確認を。
 おなかの赤ちゃんのために時には自己犠牲を払うことも覚悟の上妊娠しましょう。
8.赤ちゃんが完全に元気であるか分かる方法はありません。
 胎児心拍のモニターや超音波など、赤ちゃんが元気であるか評価する検査はありますが、どれも完全ではありません。
 予定日を目前にお腹の中で突然死をしてしまう赤ちゃんもいます。もし動きが少ないと思ったら病院へ。
 無事に産まれるまでお母さんも赤ちゃんも安心できないのが妊娠なのです。毎年5000人以上の赤ちゃんがお産の間際や生まれてすぐに死亡しています。
 また、脳性麻痺になる赤ちゃんがいますが、その90%は分娩前にすでに原因があり、分娩を機に脳性麻痺になる赤ちゃんはわずか10%であることも知っておきましょう。
9.出産は出来うる限り安全な場所でしましょう。
 妊娠経過にどれだけ異常がなくとも、出産の時に赤ちゃんやお母さんが急変することは誰にでもありえます。
 専門家が考える安全な場所とは、緊急時に、高次の医療機関(産科医と新生児医と麻酔医が揃っていて、帝王切開や未熟児医療ができる体制)か、そこへすぐ搬送できるくらいの近さの産院です。
 部屋がきれいだから、ご飯がおいしいから、好きな姿勢で産めるから、上の子を立ち会わせたいから・・
 そんな理由で緊急時の安全性が劣る産院を選ぶのはおすすめしません。
 もちろん、納得の上でなら構いませんけれども。 お産をなめてはいけませんよ。
 (残念ながら現在産科医不足のため、妊婦さん全員が安全性の高い病院を選ぶとパンクしてしまいます。だから、リスクの低い妊婦さんには高次の医療機関ではなく開業の産婦人科を選んでもらわないといけない場合も多いです。でも、最低でも産婦人科医立会いの下お産しましょう。)
10.下から産んでも、お腹から産んでも、あなたはお母さん。
 人によっては骨盤位(逆子)などの理由ではじめから帝王切開をしないといけない人もいます。また、陣痛が来て頑張っても、下から産まれなくて帝王切開をしないといけない人もいます。
 どんな出産になっても、あなたが身を削って赤ちゃんを産んだことには変わりありません。
 帝王切開で産むと子供の性格が悪くなるとか、親子の愛情が無くなるとかいう悪意に満ちた色々な妄説に惑わされないで。
 あなたと赤ちゃんにとって一番安全な方法でお産をしましょう。
11.妊娠・出産は一つとして同じものはありません。
 妊娠・出産を経験すると、自分が何でも知ってる気になってしまう人がいます。年配のご婦人で「私のときはこうだったわよ」のように先輩面をする人もよくいますよね・・
 でも、一つとして同じ妊娠・出産はありません。
 同じ人が次にまた妊娠しても、同じようになるとは限りません。
 自分の経験を別の人や別の妊娠にあてはめないようにしましょう。
▲このページのTOPへ戻る
戻る