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日本はこれから何を目指すのか【京都府医師会長:森 洋一】
日本はこれから何を目指すのか

京都府医師会長  森 洋一

 東日本大地震を契機に、国民の意識は大きく変わろうとしていますが、恐らく変わろうという意識が希薄なのは、政治家だけではないかと思われる程に、国会での議論は進まず、政局に明け暮れています。想定外という言葉が便利使いされ、何でも想定外で済ませてしまう風潮があります。今回の災害を想定していた人たちは、蚊帳の外におかれ、想定外として、他人事のように評論する学者や原発関係の評論家がマスコミを賑わしています。多くの人たちが、今回の大震災を契機に、ものの見方、考え方、生活のあり方を変えようとする意識が強くなった中で、マスコミも学者たちも自ら意識改革をしなければならないと考えます。
 バブル崩壊後、緩やかな回復傾向を見せていた日本経済が、その後、一向に回復せず、格差の拡大と雇用環境の悪化に国民は喘いできましたが、政治家や経済学者は、改革が不十分の一点張りで、何ら有効な対応ができませんでした。財政の悪化と社会保障費の増加から消費税の増税による財源確保が政治課題に上がっていますが、選挙、政局が政治信念、理念より優先される我が国の政界では、真剣に議論されないままに先送りとなっています。政治の最大の課題は、消費税ではなく、我が国をどのような国にするかが、一番問われるべきであります。国のあるべき姿を提示し、その目標に向かって工程表に添った計画を示し、そのための費用と成果を明示して費用負担をお願いするということが必要です。社会保障費で財政が破綻するから消費税をという議論では、では増税はすべて社会保障に回すのですか、年金のように勝手に使ってしまうことやどこかに消えることはないのですか-という話をしなければなりません。
 ご承知のように、北欧は、福祉の国が「国是」である所が多い。また、アメリカは「自由」が、フランスは「自由、平等、友愛」が国民のアイデンティティーといわれてきましたが、これらの国でも、アイデンティティーとはという議論が興ってきています。
 では、我が国は、どうでしょうか?
 日本をどのような国にするのかという真剣な議論がいま、一番求められている、いや、もっと以前から議論しておかなければならないことだったのではないでしょうか。
 多くの国民は、定年後の生活、社会保障に不安を持っていると答えています。何故でしょうか?皆年金制度、世界に誇る皆保険制度がありながら、明日の心配をしなければならないのは何故でしょうか。政治が、国民に明日の安心を示すことができずにきたからだといわざるをえません。
 日本は、革命で自由や、民主主義を獲得した歴史も有りません。明治維新以降も、欧米に追いつき追い越せで世界から学びました。第二次大戦後も、ひたすら世界に追いつき追い越せで、世界第二位(今は三位ですが)の経済大国に成長しましたが、日本人の国是の確立には至らなかったといわざるをえません。
 今必要なことは、政治が、信頼を回復し、明日に希望の持てる、明日に仄かでも良いから希望の明かりを示すことだと思います。
 今回の震災で明らかになったように、我が国の国民の忍耐力、思いやり、何よりも、現場での多くの人たちの支援、実行力、被災者の現場力は、素晴らしいものが有ります。これが、企業の利益や、霞が関、政権となると、途端にまとまりが無くなり、「俺が俺が」の世界になってしまい、危機管理すらできない状況となります。マスコミも、大災害の復興局面に入り、これからはどういう支援が求められるのか、街づくりに対する住民の声をどう取り上げて行くのかという地味な報道が求められているにもかかわらず、政局と原発問題や風評被害を煽りかねない報道が目に付いてしまいます。
 経済も行き詰まり、政治も行き詰まっている今こそ、国民が声を挙げて、日本をどの様な国にして行くのかを考えていく、自らの力で国づくりをしていかなければならない時代になったと思います。
 多くの国民は、福祉の充実を望んでいますが、北欧のような福祉国家作りは可能でしょうか。米国のグローバリズムが世界を席巻するなかで、リーマンショック以来、徹底した利益追求への懸念、見直しが、経済や哲学の分野でも出てきています。経済活動においても、自律や一定の規制が求められている時代です。政治の世界でも、我が国のあるべき姿、すべての国民が一緒になって取組める目標を設定すべき時だと思います。残念ながら、1億3千万人の夢が結実するような、国是を提唱してくれるような宰相は、儚い望みかもしれませんが。
 医療に従事するものとして、この数十年忘れてきていたもの、日本人らしさを求めていきたいと思います。人に優しい社会、互いを思いやる社会、お互い様、素直に有り難うといえる心を育てる教育が欠かせないと思います。ここから出発すれば、医療の提供体制、多職種との連携など上手くいかないはずがありません。社会と医療の関わりはさらに緊密なものとなり、患者さん中心の医療・介護・福祉の提供がスムーズにできるはずです。世界では理解しがたいかも知れませんが、古来より、近江商人の三方よしの経営理念、陰徳善事などの考え方は、これからの世界の経営者に欠かすことのできない考えだと思います。今回の東日本大震災で、世界中が日本人の一端を理解したといわれています。忍耐力があり、決して感情に走るのではなく、お互いを思いやり復興に全力を挙げている姿を見て、国民は一流、政治は三流とすらいわれています。我々が求める、患者さん中心の医療。以前から申し上げているように、患者さんとともに医療に取組み、そのために、最善の医療が提供できるよう自己研鑽を積み、患者さんの信頼を確保する。国は、最善の医療を提供できるよう医療体制を確保し財源を確保する。国民は、最善の医療を受けるために、一定の負担と自らの健康を守るために努める。これらを、人に優しい、思いやりの心で実践できる国作りを医療界から政治の世界に強く訴えていかなければ、国民の生命と健康が守れないと信じてこれからも府医は活動を続けていきたいと思います。


| ご意見 (0) | 2011.07.15, Friday 01:51 PM |



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