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専門医制度と総合医問題について【京都府医師会長:森 洋一】
専門医制度と総合医問題について

京都府医師会長 森 洋一

 総合医、総合診療という呼称が使用されるようになって久しい。また、現在、厚生労働省の「専門医の在り方に関する検討会」で着々と「総合医」資格創設に向けて議論が進められている。日本専門医制評価・認定機構では、①総合的な診療能力を持つ専門医の医師像②研修プログラム③名称と他の専門医制度との関係が議論されたとされている。また、第三者機構による新たな専門医制度の議論が最終段階に入っており、日医もはいって研修プログラムを検討するとしている。都道府県医師会では、問題ありとの声が出されているが、日医は、明瞭に反対の立場ではないと思われる。果たしてこのまま厚労省の方針に流されていて良いのか大いに疑問が残る状況である。府医では、以前より、専門医制度における総合医という資格・呼称には明瞭に反対してきたが、学会、専門医会ともに異論ありとの声が聞こえないようであり、今一度、府医の立場を明瞭にしておきたい。
 そもそも、「総合医」という言葉が使用され始めた詳細な経緯は、いろいろあるが、大まかには3つの流れがある。
 一点目は、大学病院、大病院を中心に診療が専門分化し、受診した患者が何科を受診すればよいのかわからないというようなことから(かかりつけ医が、診療に基づき専門医を紹介しておればこのようなことはないはずであり、紹介なしに受診される患者がいることが問題)病院の外来を振り分けるという意味で大学病院を中心に総合診療科なるものが設置されるようになった。現在は、殆ど機能していない病院と、新臨床研修制度の導入で、新臨床研修制度に関連して取組みを行っている病院に分かれる。
 二点目は、髙久日本医学会会長が、大学で高度先進医療や先端医療を受けて退院され在宅療養を希望される患者の受け皿がないため、在宅医療も含めた受け皿としての総合医の必要性を提唱されたことがある。大病院で診療を受ける方の大半はかかりつけ医からの紹介であると認識しており、そうでないケースや、最近の在宅医療も高度化してきているため紹介はしたけれど逆紹介は困るという医療機関があるのかもしれないが、このような患者は、地域の医師会で受け入れ体制を整備し、主治医となっていただけるかかりつけ医を紹介することで受け皿を作っていける。
 三点目は、いわゆる僻地、過疎地の医療を担って頑張っている医療機関等での研修を受け、地域医療を担っていきたいと考える若い先生方、プライマリケア医や家庭医を名称として地域医療を進めていこうという人たちの集まりである日本プライマリケア学会や日本家庭医療学会、日本総合診療医学会が一緒になり日本 プライマリケア連合学会となったが、そのような医師が総合医なるものの認定制度をもとめている。しかしながら、果たして目指しているものが一緒なのかどうかはなはだ疑問であり、三学会の連合の契機も日本医学会に組み入れ、総合診療という名の専門医制度の導入を企図して日医が主導したものであり、問題があるのではないかと考える。
 日本の「かかりつけ医」は、専門分野で修練を積んだ専門医の医師が、開業し地域医療に取り組んできた。診療所の医師として専門分野の知識と技術を最大限に発揮しながら、地域医療に必要な広い分野の医療、医学の知識を獲得して、かかりつけ医として地域医療の発展に尽力してきた。大病院に行かずとも、診療所の医師が専門分野の技術をお互いに活かした連携をとり、心疾患は循環器科の医師、消化器疾患は消化器科の医師へとお互いの専門性を活かして地域で医療を完結できる部分は地域で、さらに高度な医療は大病院で、と日本の地域医療を支えてきた。かかりつけ医の機能が不足しているというのであれば、どの部分を強化すべきなのか、何を補填すべきなのかの議論をすべきである。かかりつけ医の質の担保と向上は、総合医の称号とは無関係にはかり続けなければならない課題である。
 また、新臨床研修制度の発足においては診療能力の高い医師を涵養するとしてきた。もし、現在のかかりつけ医の診療能力が低いとするならば、どの部分がどのように低いので強化されるべきという議論が必要である。
 「専門医」制度の日常診療上の問題点が、自分の専門外の疾患の診断・治療を依頼しようとした際に、紹介先の医師の質が判断しにくいという事が問題であるとするならば、専門医ないしは認定制度を創設した各学会が透明性を持って、認定・更新の質の確保に努め、その状況を公表し、評価を受けること以外に信頼を獲得することは困難だといわざるをえない。すべての学会が新しい認定システムとしての「第三者機関」を設置する事に賛成しているから、質が担保できる、信頼が得られるというのは本末転倒であり、第三者機関で新たな専門医制度を発足するというのであれば、専門医制度に屋上屋を重ねるというよりは、従来の自らが創りあげた専門医制度の質に問題があったと自己否定する事と同義ではないだろうか。自らの創設した専門医制度を否定し、新たな専門医制度を創設するには、何故に新しい専門医認定が必要なのかを説明する責任があるといわざるを得ない。
 また、学会任せでは信用できないとの批判が出ているとすれば、現在の専門医制度の質に責任を負うべきは「日本医学会」ではないだろうか。まして、専門医の質をさらに高め、専門医の中でもエキスパートを認定していこうとするのであれば、各学会で現状の制度の問題点と改善すべき課題を検討し、サブスペシャリティーとの兼ね合いをどうするのかを議論した上で取り組みを進めていくべきと考える。
 また、今回の第三者機関における専門医の認定制度には、指導医と称して専門医の数を制限しようという意図が強いと思われる。このことは、今後、専門医の資格が大病院の診療報酬に反映される前提であるように思われ、十分な注意が必要と考える。また、一方で、このような議論を始める前提として基本領域に「総合診療医」をおくということは、論理的に大きな矛盾がある上に、何らかの意図があると認識すべきだと思う。ここに、以前から指摘してきた、大病院からの逆紹介先の医師の確保や大学などにおかれた患者振り分け機能としての総合診療部、老人の診療を心身を含めて総合的に診療するなどというもっともらしい理由をつけてでも創設したいという厚労省と医学会が一体となった動きに注意すべきと考える。
 また、医師不足に悩まされている地方では、若い先生方が総合医として赴任してほしいという要望が強いようであるが、基本的に、医師不足解消の方策としての総合医の資格創設を検討するのであれば、地方と都会の分断、医療提供体制の地方と大都市の分断施策に繫がるものではなく、基本的な医療提供体制についての議論に基づいて検討されるべきと考える。100の自治体には、100の地域医療があるというのが私どもの見解である。地域のニーズに合わせた、また、周辺地域との連携による適切な専門医療、かかりつけ医による地域医療の提供体制の構築こそがすべてで、医師の資格創設で固塗するような政策であってはならないし、これからの地域医療における診療報酬の差別化に繋げようとする厚労省の意図は明確で、日医は反対の姿勢を明瞭にすべきと考える。


| ご意見 (0) | 2013.03.04, Monday 05:29 PM |



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