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5分でわかる勤務医問題【京都府医師会理事:上田 朋宏】
5分でわかる勤務医問題
~地域医療の基盤である勤務医を支えるために~


京都府医師会 理事   上田 朋宏


 京都府医師会勤務医部会は平成21年12月に「勤務医・女性医師の労働環境等に関する緊急意識調査」の結果(90ページ)をまとめた。そこで、勤務医の何が問題で、医師会として何をしなければならないのか本調査から明らかとなった勤務医の生の声からわかりやすく説明したい。


1.調査結果から見えるもの
 京都府内の66病院に所属する勤務医3009名中668名(回収率22.2%)に対して無記名、自由意見も含めた選択設問(約90問)の集計である。女性医師が25%、勤務先は公的病院が42%、医療法人が28%で、常勤医77.5%だった。労働環境では、月の時間外労働が100時間以上という回答が11.8%を占め、宿直明けも連続勤務は70.7%に達し、有給休暇も半数の人が利用したくても「できない」状況であった。また、手当についても、半数が諸手当が支払われていないと回答した。この環境に80%以上の勤務医は「医師が足りない」と感じており、「不安、不満、悩み」の訴えの中には、男女とも「文書作成」の多さが第1位で、女性は「勤務と家事との両立」が2番目の悩みだった。医師として学会参加へのサポートは不十分だと約70%が実感しており、研修医への指導手当もほとんどなく、指導医の不満は大きい。

 女性医師にしぼってみると、仕事を続ける条件は「家族や上司の協力」が必要と思っているのが70%を占め、次に労働時間、病院のサポートの順に多かった。保育、託児所施設の不備を60%以上の方が訴え、休職・離職は出産・育児が原因で、復職するためには家族・病院の協力が必要と訴えていた。
最後に、京都府医師会勤務医部会の存在を知らない人が57%もあり、さらには部会の活動内容を90%の回答者が「知らない」と答えた。医師会にとっては、非常に耳の痛いご意見であるが、勤務医対策を怠ってきたことの裏返しでもあり、最も反省しなければならない点であろう。


2.勤務医の労働環境および労働条件の改善にむけての課題
 予想通り労働基準法の規定を超える100時間以上の長時間の時間外勤務が11.8%の勤務医が経験していた。この傾向は医育機関および国公立病院に多い。「残業に関する労使協定(三六協定)を結んでいないのに医師に残業させている」として労働基準監督署からの是正勧告が絶えない。しかし、勤務医はたとえ残業の上限を定められても必要な場合は患者から離れることはできない。ただ、十分な時間外手当なしに奉仕してきた(67%)わけで、非常に安価で世界一の水準を保ってきた日本の医療は勤務医の無償の奉仕の部分で成り立ってきたといっても過言ではない。このあたりは、医療事故でも大きな問題となっている技術料とリスク、それにあう報酬が規定されていないため不満が大きくなっていると思われた。医師数の不足も85%の勤務医が感じていた。労働基準法に適合する労働環境を実現するためには、もっと人的資源の投入が必要であることが明らかになった。勤務医の無償奉仕の実状の是正、改善が急務である。4月から診療報酬制度の改定がなされるが、Hospital fee とDoctor fee の両方を設定することを考えないと根本的に解決できない問題でもある。これは、米国の勤務医のように、病院の施設を借りて外来診療、手術をする個人事業主の形態に勤務医を誘導するのか(すべてではないchairmanだけ)、または、病院は入院部門だけで経営が成り立つようにするのかなど、日本独自の制度設計、将来ビジョン構築が急務である。この時必ず医療費財源論になるが、薬剤、診療材料を無償で販売している病院勤務医に、全くキャッシュバックがなくメーカーだけに利益が配分される産業構造自体にもメスをいれるべき大きな問題を内包している。


3.女性医師に特化した就業支援体制の充実
 女性医師は医師と結婚する場合が多い(31%)。就業を続けるためには、家と仕事場の理解がいると73%の女性医師は考えている。賃金は二の次だった。仕事を辞める原因のほとんどは出産・育児である。この部分のサポート体制(23%があり)、育児施設などがほとんどの病院でないところに解決の難しさがある。女性医師が休職・離職してから復職するための中間施設がなく、すぐの現場復帰であるために非常勤医師が多くなることも納得できる結果である。医師不足が叫ばれる中、女性医師が働きやすい環境を作ることが医療崩壊を防ぐ大きな手立てになることが、今回の調査で明らかになった。


4.京都府の地域医療資源再配備における医師会の役割
 地域医療ネットワークは病院と診療所と家庭を結ぶものである。しかし、今回の調査結果から注目すべきは、医師会は開業医のための営利団体で、勤務医のための医師会であるとは思えない意見が散見されたこと、勤務医部会が医師会に存在することを認知されていなかったことが挙げられる。これは、従来の勤務医部会が病院長等管理者ならびにそれに準ずる医師の連絡協議会的存在であったからである。しかし、現在の京都府医師会の運営哲学とその実践を知りえたならば、「医師会が開業医だけをみている」という考えは偏った見方であることはわかる。しかし、勤務医は、問題を感じてもその直属の上司である院長や自治体の首長がその問題意識を共有し、政府や地域行政に働きかけるぐらいのエネルギーが無い限り労働環境は変わらない。大学の変革ですら、新聞記事コラムで「墓場の引越し」に喩えられ、内部の自浄努力で改善することが極めて難しい。そこで、外部から広い視野で医療資源を統括しコーディネートできるのは医師会しかありえないといえる。

 日本医師会には最近批判も多いが、京都府医師会には少なくともそれだけの役を担う力がある。勤務医部会が、京都府全体の医療をより充実した適切な環境にするために機能するようにしていきたい。また、京都府の地域医療を俯瞰すると北部地域に医療崩壊の兆しがあると喧伝されているが、医療法に規定されているとおり京都府知事が地域医療計画策定の責任者であることを勘案すると、今こそ京都府医師会と京都府(知事) との協業により関連自治体の首長を強力に指導し、人的資源、財的資源の適切な投入を具体的に実行する時と考えられる。


5.これからの「京都府医師会」
 京都府医師会の役員は、開業医のことはもちろん、勤務医のことを同じ目線で考えている。しかも京都府のみならず日本全体の医療を見渡してことをなしている。翻っていえば、京都府・京都市の医療行政を向上させ日本医療全体に反映させていくのが、京都府医師会の責務であり、理念である。そもそも医師会は、地域・国の医療を将来にむけて安心できる体制を維持できるように専門家としての立場で意見していく集団であるべきで、開業医だけの利益集団と思われることに恥じるべきである。一方、勤務医も文句を言うだけで、受動的なサイレントマジョリティのままでは、現在の医療崩壊だけでなく自分の子供たちの将来に医療崩壊の影響が及ぶ可能性がある。

 この危機感が、単なる医師だけの危機感でなく、国民に共有できるような手立てを同時に並行して行わなければならない。これは学会が、医師会があまりに閉鎖的で国民に説明責任を果たしていなかったことも少なからず関係していると考えられる。


 日本の勤務医はがんばっている。しかし、その使命感が途絶しそうな医療環境であることは間違いない。これまで頑張ってきた医師が、頑張れば頑張るだけ、より疲弊するような悪循環を打破しなければならないが、その力は、医師会にしかない。勤務医に対する特効薬は患者さんの「ありがとうございました」の感謝の言葉である。これが疲弊する勤務医を一番勇気づけ、元気づける。この患者と医師の信頼関係を再構築するためにも医師会は勤務医をサポートする大きな力になるべきである。今こそ日本医師会に、将来にわたって日本の医療を守る医師全体の団体としての意識改革を望む。


<参考資料>
京都府医師会勤務医部会
『勤務医・女性医師の労働環境等に関する緊急意識調査(総括)』
http://www.kyoto.med.or.jp/info2/pdf/kinmui20100203.pdf


| ご意見 (4) | 2010.02.03, Wednesday 07:41 PM |


伏見医師会の依田です。当医師会でもB会員が6割を優に超えています。全てが病院勤務医ではありませんが、地区医師会でも勤務医の医師会活動への協力なしには、医師会の活性化はあり得ません。
 なるべく勤務医の先生方にも執行部に入ってもらい、医師会活動に生かしています。しかし昼間の地域検診等の活動は困難ですし、勤務医の多忙さは誠に大変です。どうしたら勤務医の先生にも医師会が身近なものに感じてもらえるのか、頭を悩ましているところです。
 学術中心に、ランチョンセミナーを頻回に行い、新しく入会された勤務医の紹介を兼ねて、その先生の専門をお話頂きます。双方に好評で、既に5年以上継続しています。府医でも名案があればご紹介下さい。
| 依田 純三 | 2010/02/03 09:53 PM |



依田先生 ご意見ありがとうございます。
府医としましても、地域医療における連携をうまくアレンジし、勤務医のやれることできないこと、開業医のやれることできないことを考えて、診療所と病院勤務医がお互いが協力しあう地域を京都府全域そして日本全体に広げられるようにいろいろな手立てを計画していきたいと思います。
本年は新京都府医師会会館ができます。face to faceで勤務医と医師会の先生と交流できる場を提供したいと考えています。各地区医師会での勤務医との交流会がより活発になるように努力したいと思います。


府医 勤務医部会担当理事   上田朋宏
| 上田 朋宏 | 2010/02/09 11:03 AM |



左京医師会の門 祐輔です。
あらためて先生の見識の高さに敬意を表します。下記の記載について質問をいたします。

「北部地域に医療崩壊の兆しがあると喧伝されているが、医療法に規定されているとおり京都府知事が地域医療計画策定の責任者であることを勘案すると、今こそ京都府医師会と京都府(知事) との協業により関連自治体の首長を強力に指導し、人的資源、財的資源の適切な投入を具体的に実行する時と考えられる。」

2010年1月13日に京都府は北部医療対策として「府医療対策本部」を設置しましたが、構成員は京都府と府立医大だけでした。本来京都府医師会も参加する「京都府医療対策協議会」があり、そこには府医師会や京大などもっと広い医療関係者が参加しているはずです。しかし私の知る限りでは「協議会」で北部の医療体制を具体的にどうするか、協議した形跡はありません。これはなぜでしょうか?
また京都府と府立医大だけで北部医療対策として「府医療対策本部」を設置したことに対して医師会はどのようにお考えでしょうか?
| 門 祐輔 | 2011/02/20 09:06 PM |



 門先生、過分なご評価恐縮いたします。このブログも1年前のものですが、提言したもののなかなか実働を伴っていないとのご指摘も真摯に受け止めたいと思います。京都府医療対策協議会ワーキンググループの委員となり1年間、京都府北部や南部の医師確保の問題について問題点を抽出し中長期的対策を検討してきました。
 京都府「絆」ネットや医師会メーリングリストなど縁をつなぐ仕掛けも始まりました。ただし、行政と大学と公的病院、病院団体で問題意識の温度差があるのも事実です。加えて地域の実態評価も甘いのも事実です。現在、包括的に地域医療をみる体制(具体名:地域包括ケアシステム)を京都府知事がリーダーシップをとり始まりつつあります。ここに医師会が意見し、コーディネートする役目があると考えています。ご指摘のように情報を広報し、医師会で意見を集約し提言する地域医療を守る役目を確固たるものにしたいと考えています。今後ともご指導よろしくお願いいたします。

京都府医師会勤務医部会担当理事  上田朋宏
| 上田朋宏 | 2011/02/22 11:30 AM |




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