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日本医師会会長候補マニフェストの裏付けとしての京都府医師会の見解
京都府医師会の見解
~ 森 洋一 日本医師会会長候補マニフェストの裏付け ~


各 位

此のたび日本医師会会長選挙に京都府医師会会長の森洋一が立候補いたしております。
各方面からいただいておりますご疑問やご意見にお答えし、あわせて選挙マニフェストに網羅いたしました方針等について、日頃から森会長指導のもとで取りまとめてまいりました京都府医師会の考え方をお知らせさせていただきます。
厳しいご指摘やご意見をいただきますよう何卒よろしくお願い申し上げます。

I: 総務部見解
 1)「政治に左右されない日医に」
 このスローガンに対して、政権への交渉力に疑問をいただいております。それについての本会の見解は以下のとおりです。

 民主党はその政権戦略として以下の二つの方法を取っている。一つは、選挙スローガンであった「国民の生活第一」を具現化する政策を政府において実行していくことで国民の支持を得ることであり、もう一つは党幹事長室を中心に旧政権与党であった自民党的手法、即ち自民党支持団体を民主党支持に転換させることである。

 唐沢日医会長が述懐されているように旧政権において与党の自民党との関係を密にする努力をし、成果をあげてきたがそれでも診療報酬のネットプラス改定は実現しなかった。今回の改定においても幹事長室の一定の関与はあったのであろうが実質はほとんど0%改定になった。その理由は明白であり、医療崩壊の解消のために必要な大幅なプラス改定の前に立ちはだかっているのは国家財政の壁である。

 我々は今回の政権交代の最大の意義は、民主党が従来から主張してきた「国家財政の見直し、透明化、組み換え」にあると理解している。このことを徹底して行い医療費の増額に必要な財源を確保することが先ず必要である。更に、恐らくそれでも不足する医療・社会保障の充実のために必要な国民負担の増加について、このことを徹底して行なうことで国家財政の運用に対する国民の信頼を取り戻しつつ理解を得ることも必要になる。我々、医療・社会保障の充実を求める立場から言えば、これが現政権の最大のミッションである。

 現政権の中枢には、前原国土交通大臣、福山外務副大臣、山井厚生労働省政務官、松井官房副長官など京都府選出の国会議員が多い。我々はこれらの国会議員と8年前から、当時の森理事(現会長)の主導の下で定期的に懇談し議論を重ねて来た。かつては、現財務大臣の菅氏や国家戦略室担当大臣の仙石氏、厚労省政務官の足立氏もこの議論に加わられたこともある。

 我々がこのような議論の繰り返しから学んだことは、此の党はしっかりと検討された意見に対しては常に耳を傾ける用意があるということであり、議論の結果、理解し納得したものについてはそれをそれぞれの政策論にとりあげていくということである。擦り寄りやもたれかかりは通用しない。

 我々は、常にこのような意見の提出と議論の展開を積極的に政権に行なっていく用意がある。その為の太いパイプも持っているということを明言したい。


 2)政権交代、民主党のマニフェスト(京都医報 平成21年10月1日号より)
 「自民党に対する大いなる不満と民主党に対する不安」の選択ともいわれた今回の衆議院選挙は,終わってみれば民主党の大勝でした。郵政民営化という国民にはわかりにくい争点を掲げて4年前の衆院選を自民圧勝に導いた小泉首相が,自らの美学なのかそれとも今日あるを独特の感で察知したためか,その1年後に退任してから,参院選敗北の後のねじれ国会の運営をストレスに感じて体調を崩し政権を投げ出した安倍首相,「貴方とは違うんです」と与党内の不人気を「客観的に」判断して政権を投げ出した福田首相,漢字もろくに読めずに決断力の不足と軽挙妄言をくりかえした麻生首相,そして衆院選直前の党内のごたごたなど,国民に痛みを強いた政策の後に国民に向き合わないこれだけの事象がくりかえされれば,不満が不安をはるかに上回る結果になったことは当然のように思えます。勝者の圧勝傾向は小選挙区制につきものと言われますが,比例区を併施している現在の選挙制度の中で,両党の総獲得票数の差が示すものは,決してそれだけではなく国民の間にある閉塞感が本当に深刻であることを示していると理解しなければなりません。

 そして,政権が交代しました。

 マニフェスト選挙が言われて久しい今日においても,日本ではまだ本当の意味でマニフェスト選挙は定着していないのではないでしょうか。今回の結果も,民主党マニフェストへの積極的期待というよりは,自公政権への不満の方がその大きな要因であったと考えるのが妥当ではないかと思います。しかし,いずれにしても政権は交代し今後の民主党による政権運営の基盤は今回のマニフェストになります。選挙以前から指摘されているように民主党のマニフェストには様々の問題点は確かにあります。医療関連についても本号「保険医療部通信」に掲載した民主党マニフェストの詳細版にも見られるとおり,行程表や財源処置の明らかでないものから,かつて我々の指摘によって民主党政調として党の見解ではないと否定されたようなものまでが含まれています。一般に例えれば頻繁に政権交代の起こる米国では新政権とマスコミの関係は新政権発足後の100 日間を俗にハネムーンと称し強い批判は控えて新政権のお手並みを見守るということが通例のようですが,現時点で我々が新政権を見守るとすればそれはたった一つの点においてであろうと思います。

 小泉政権とそれ以後の自公政権の下で,日本の医療・介護等の社会保障は大きく後退し弱体化しました。その回復を求める国民の声が今回の選挙結果であるとすれば,我々が従来から主張してきたように新政権はこれを回復させなければなりません。その観点からすると,民主党の「政権交代」の根幹である「国家予算の見直し,透明化,配分の変更」という政策論が最も重要であると考えます。

 そう考える理由は幾つかあります。
 まず第一に,前政権の下では社会保障費は国家経済の負担としてのみとらえられ,国家予算の均衡化を省是とする財務省の主導の下で「社会保障費の伸びの年間2200 億円削減」政策に代表される抑制政策が採られて来ました。国民に対しては日本の累積赤字が800 兆円とも900 兆円とも喧伝され,国民の理解を求めるような政府の姿勢が続きました。多くの経済識者が指摘するように,一方では,日本の国家のいろいろな意味での資産は約700兆円ともいわれ,純粋の負債額は200 兆円規模であり,先進諸外国間でとくに突出するものではありません。しかも,米国などとは異なり,日本の国債はほとんどが日本国民によって購入されています。もちろん,国家の赤字国債の発行高の増大や年次予算の赤字の累積は日本経済に対する国際評価などの面や従来から指摘されている「次世代への借金の先送り」というような国内事情から見ても好ましいことではなく,是正の必要があることは前政権の時から言われているとおりです。そうであるからこそ,この「国家予算の見直し,透明化,組み替え」が重要なのであり,そのような政策運用が適正に行われれば,日本経済の観点から見ても,国家予算としてこれほどの社会保障費の削減を続けなければならない理由はないのではないかと考えられます。

 次に,医療・介護などの社会保障分野は,9月15 日号の森府医会長見解にも述べられているとおり,他の産業分野に比べて高い雇用促進効果と経済波及効果をもっていることが平成20 年度の厚生労働白書にも明らかにされています。米国発の市場原理主義経済がグローバリズムの名の下に世界を席巻し,サブプライムローンの破綻によって多くの国の経済に多大の影響を与えました。そのような金融商品の購入額という点では日本は先進諸外国に比べて低く,日本における破綻の影響は少ないという当初の政府の見解にもかかわらず,GDP の落ち込みが先進諸外国間で最大になるなど,日本は実際には最大の影響を受けています。その理由は明らかで,諸外国にくらべ突出して外需依存性の高い日本の経済構造が,諸外国の経済事情の悪化による輸入の極端な減少の結果として最大の影響を必然的に受けたということになります。BRICSに代表される諸国の経済の伸張に伴う原材料価格の高騰や人件費格差による商品価格の格差など,今後の日本経済がこれまでのように外需依存型を突出させていくことは不可能であり,以前から指摘されて来た内需依存型へのシフトを現実の問題として模索しなければなりません。社会保障分野の強化は,このような内需拡大の大きな一つの手段であることを指摘しなければなりません。

 三番目の理由は,国民の意識です。日本の個人貯蓄が先進国間でも飛び抜けて高く,その多くの部分が現在の高齢者層に集中しているという現象は何を意味しているのでしょうか。
 退職後の自らの生活への不安が恐らくその最大の要因なのでしょうが,それはとりもなおさず現在の日本の社会保障体制に対する不安であると同時に,政府の国家予算の執行に対する不安と不信任の意識によるものと言わざるを得ません。更に現在の若年就労者は,小泉政権以後の政策によって,大企業のキャッシュフローが過去最大になる一方で被用者の年間所得は減少するというような状況に置かれ,その中で少子高齢化による年金・医療保険・介護保険の負担が増大し将来に備えた貯蓄さえ行えない状態に置かれています。この状態のままで,これらの人々の政府に対する信頼は醸成できません。

 「国家予算を見直し,透明化し,組み替える」という作業は,ここに述べたような理由によって,日本の経済構造を変え,国民に将来の安心と安全を担保し,日本を確たる社会保障国家に導くためには決して避けて通れない道筋であると思います。このような作業によって国家の予算運営に対する国民の信頼を取り戻し,社会保障の充実によって将来の国民生活の安心と安全が実感できる政治が望まれます。少子高齢化の進む日本では,これらの国家予算の整理を行っても社会保障財源は決定的に不足するはずです。社会保障を充実させようとすれば,今盛んに議論されているように,消費税率の引き上げや保険料の引き上げなど何らかの財政改善処置はいくら国家予算を見直し透明化し組み替えてもいずれ近い将来に必要になると考えなければなりません。これまでの日本では,細川政権の崩壊を始めとして,その後の自民党政権においても消費税の引き上げは常に国民の支持を得られませんでした。国民が国家の財政運用を信頼し,税を取られるという意識とそれによる社会保障の給付,即ち,「負担と給付」という認識から,税を預けるという意識と給付される社会保障への安心,即ち,「預託と給付」という認識に変わることが社会保障国家日本の確立のための第一歩として必要不可欠なことであると考えます。

 今後,毎年行われていく国家予算の編成を,100 日というような短いスパンではなく,長期にわたって我々は注視していかなければなりません。



Ⅱ: 保険医療部見解
 1)「医療の量と質」
 日本の国民皆保険制度は、既存の企業健保に加えて市町村国保や中小企業向けの政管健保を新たに創設することにより発足した。第二次世界大戦の終戦後16年を経て始まったこの制度の最大の目的は、国民に遍く医療を提供できる体制を確保すること、即ち、医療提供の「量」の確保にあった。敗戦から立ち上がり国家経済の立て直しと持続的な伸張を実現するための健康な労働人口の確保が国家の政策として最重要課題であったということである。一方で、その後の科学技術等の進歩と相俟って医療の技術が飛躍的に進歩し、その結果として加療対象の急速な拡大がもたらす医療費の増大はその国家経済との関連において資本主義先進国共通の課題となった。その中で、我国の国民皆保険制度はその運用において図らずもWHO等から高い評価を受けるようになった。今日、我々が日本の社会保障の象徴のように捉え、その堅持を主張し続けているこの国民皆保険制度は、発足当初において「量」の確保が社会保障そのものであった時代から本質的に変化していない。だからこそ医療費亡国論が語られ、経済の規模に合わせた医療費の総枠管理が語られて来た。

 そしてこの間に大きく発達した新規の医療技術について、我国の保険制度における対価の評価は不当に低く抑えられその結果が対GDP比で先進国中最低の総医療費という現象を生んでいる。医療技術、即ち、医療の「質」の評価という視点をあまりにもないがしろにし、その「質」の担保を殆ど医師の使命感に委ねてきたのが今日の日本の診療報酬体系の姿である。随所に見られる物と技術の包括はその最たるものであるが、このような評価のあり方が病院の経営危機や勤務医の疲弊を招いている。今季の改定においては中医協で外保連試案が提示され、これに基づいて外科手術料の引き上げが行われることになった。「質」の評価への道を開く第一歩として期待したい。一方で、先進他国に比べて早いスピードで少子高齢化が進む我国においては、これらの先進医療技術ばかりではなく、診療所が担当するような通常の医療についても必然的にそのニーズが増えていく。これらの医療は単価は低いが利用頻度が高いことによって総額としての医療費は此の部分でも増大する。このような医療の「量」のデマンドの増加と先進医療技術の評価がどのように診療報酬体系の中で均衡するべきなのかが今後の議論の最重要課題になると考えられる。

 いずれにしても、この「質」の適正な評価と増大する「量」へのデマンドを満たすためには現在の日本の総医療費はあまりにも不足している。医療費亡国論が書かれてから24年、恐らくその時から始まるべきであった国民負担と社会保障全般のあり方や、医療給付のあり方としての保険者統合論、そして真の意味での混合診療論などが今早急に議論されなければならない。そして、この「量」と「質」の問題は、翻って考えれば日本医師会のあり方の問題でもあるということを最後に付記する。日本の医師の60%以上を組織する団体として、日医はいわばその「量」によって医療団体としての代表性を主張して来た。しかし、今日、勤務医の多くが、そして国民が日医を医療の代表団体として必ずしも評価しない背景には、今日までの日医の活動が「質」の担保と向上という点において評価されていないということがあるのではないかと考えられる。今後の日医は病院から診療所まで今広く求められている「質」の確保の議論と真摯に向き合って行かなければならない。


 2)平成22年度改定の評価
   政権交代後の民主党政権下での初めての診療報酬改定であった。以下にその特徴と内容評価を記す。

  A)全体改定率
・ 社会保障費の伸びの2200億円/年・削減政策は撤廃され、その下で全体改定率として+0,19%とプラス改定となったことは一定の評価ができる。

・ しかし、プラス財源の配分として従来からの医科:歯科:調剤=1:1:0.4が今回は1:1.2:0.3とされた。医療費とは直接関係の無い政治的判断によるもので、あるべきではなかった。

・ 医科の財源4800億円について異例の枠が設定された。その内訳は、急性期入院医療に4000億円、その他の入院医療に400億円、外来医療に400億円となっている。これらの枠の設定は厚労省と財務省の折衝の中で、事業仕分け等に基づき財務主導で行なわれた。これは明らかな中医協の権限縮小であると同時に医療を分掌分野としていない財務省の越権行為である。政治主導を掲げる民主党政権がこれほどの財務省の権限強化と理解される改定を行なったことに対しては強い抗議と批判が必要である。政権発足後わずか3ヶ月での改定作業であったため、今後二度とこのような財務主導の改定内容の決定が行なわれないように厳重な働きかけと監視が必要である。


  B)改定内容
・ 前回改定の病院支援の予算額1500億円に比較して今回は病院の入院分で4400億円の原資があった。前回改定の病院支援はその内容から明らかなようにその大半は大学病院等の大規模基幹病院に集中した。

・ 今回も急性期医療に4000億円という枠の設定がある中で、中小規模病院は急性期医療の後方支援的な役割の評価など入院医療についてはわずかな引き上げに留まっている。外来分については、200床未満の病院においては、再診料が一挙に9点引き上げられたほか、在宅療養支援診療所の機能についてもその他の条件は一切なしで支援病院としてその点数が算定可能となった。

・ 個人診療所は、眼科耳鼻科などの外来検査点数が引き下げられ、外来管理加算は実質上5分要件があった場合と同様の算定制限を課せられ更に再診料が引き下げられた。
  これらの原資は、主に救急外来、在宅医療、在宅訪問看護、などに充てられた。

 総括的にこれらを評価すれば、当初の配分枠のとおりにプラス改定の恩恵は、大規模病院>中小規模病院>個人診療所となっており、特に、病院支援といいながら中小規模病院は依然として限られたわずかな財源の振り分けしか得ていないし、一般の個人診療所はプラス改定の中で、マイナスを強いられている。今季の中医協における議論でも特に地方において基幹的役割を果たしている中小病院については別の評価方法の必要性が議論されたが充分なデータが得られず見送られた経緯がある。此の部分と診療所の外来基本診療料については今後の中医協の議論の中で集約的な議論が必要である。

 しかし、いずれの分野においてもそれぞれのプラス評価は充分ではなくこれで医療崩壊が防げるとは全く言い難い改定になった。その原因は言うまでも無く総額としての引き上げ幅の不足であり、今回の改定を医療崩壊の解消の第一歩と位置づけるのであれば、最低減3%の引き上げを3回続けて行うことによって、政権公約のとおり対GDP比で医療費を先進国水準に引き上げることが必要である。今後の改定において民主党が真の政治主導を発揮しなければならない。医療費を経済の伸びにあわせた総枠管理という考え方に象徴される財務当局の医療費に対する視点は、そもそも国民皆保険制度の発足時において最大の課題であった提供医療の量の確保、というところから今日においても一歩も出ていない。20世紀の後半に圧倒的に進歩した医療技術の評価をきわめて不当に低く設定することで低医療費を実現し、これらの医療技術即ち医療の質の担保は全て医師の使命感に委ねて来た政策が最早限界点を越えているという認識が必要である。更に他の先進国に比べて少子高齢化が進むわが国においては、先進医療ばかりではなく通常の医療の提供量へのデマンドも増加し一定の医療費増を必要とすることになる。

 今後の医療費を巡る政策と議論は、この総医療費の増額のための財源論とその財源による提供医療の量と質の配分のあり方が最も重要となると考えられる。



Ⅲ: 情報化に関する見解
 1)京都府医師会のIT化に関連する活動のご紹介
  A)総論
 京都府医師会(府医)の情報・企画・広報委員会においてはこの4年間、前・油谷会長そして現・森会長と引き継がれた“開かれた医師会”の具現化のため、また森会長の強い要望である“執行部と一般会員双方向性の情報伝達促進”を目的として活発な議論と提案がなされ、府医ホームページ内での講演会等の動画配信、庶務担当理事連絡協議会等における遠方地区医師会参加のための日本医師会TV会議システムの導入、ORCA日本医師会標準レセプトソフト普及推進、会員メーリングリストの運用開始、府市民にもすべて公開する会員ページを含めた府医ホームページのリニューアル等を行ってきた。また平成21年9月からは会員報告による「インフルエンザ発生状況マッピングシステム」の稼動開始、平成22年1月からは府医ホームページにおいて国民ならびに全国都道府県医師会に府医の考え方を発信する「ブログ」も開始したところである。

  B)ORCA日レセについて
 ORCA日医標準レセプトソフト(ORCA日レセ)は、日本医師会で開発されたレセプトコンピュータシステムソフトで、これまでの市販の大手レセプトコンピュータの約1/3の価格で導入可能であり、その後の買い替えも不要で医療機関の事業コストを大幅に削減することが可能である。4年前から府医においてこの導入・普及を勧め、平成18年1月においては京都府内では41の医療機関で導入されていたが、4年後の平成22年1月には266医療機関で稼動している。全国的にも現在ほぼ1万件の医療機関で導入されており、ORCA日レセは医科レセコン業界において革新を起こしたことは間違いない。

  C)メーリングリストの活用
 会員メーリングリストは現在、勤務医師を含め府医会員の約1,000名がこれを利用して日々情報交換・情報共有が行なわれている。ここでは一般会員間だけでなく執行部と一般会員間の直接の情報伝達・交換も行われており、府医会長、副会長を含め執行部理事と一般会員の垣根を取り払うという効果が認められている。

 また、平成21年に新型インフルエンザが発生した際には、この会員メーリングリストにおける情報交換・情報共有が日常診療において、非常に有意に働いたため、ここから発展して会員が随時これを報告することでインフルエンザ発生状況をリアルタイムに表示可能なマッピングシステムを平成21年9月、全国の都道府県医師会に先駆けて開発・稼動開始し、現在に至っている。

 このほか、府医理事会におけるメーリングリストも稼働させており、毎週木曜午後に約3時間にわたり開催される理事会での闊達な議論のほか、府医役員メーリングリストにおいて日常的に情報伝達・情報共有・意思統一の場として活用されている。


 2)国の進める医療のIT化への京都府医師会の考え方
  A)レセプト(診療報酬明細書)“電算化”への取り組み
 平成18年4月の厚生労働省令第111号「レセプトオンライン請求義務化省令」は、“医療保険事務全体の効率化”を目的として、期限を限定して医療機関の提出する診療報酬明細書(レセプト)を電子化し、なおかつこれを特別のオンライン回線を使用して提出することを義務化させ、これに対応できない手書きのレセプト提出医療機関潰しを図るという、とんでもない省令であった。多くの現場の医療機関からの声や全国都道府県医師会からの反発により厚労省は平成21年11月の厚生労働省令第151号で、これを実質“手上げ方式”に是正する省令改正を行った。

 一部報道では、この省令改正により、医療のIT化、効率化が遅れるとの見出しが踊ったが、これは大きな誤解である。「レセプトオンライン請求義務化省令」に対して、多くの医療関係者が反対したのは、「レセプトオンライン請求」というレセプトの送達方法をオンラインのみに限定する点である。レセプト情報が電子化されていれば、送達方法をオンラインのみに限定しなくても、医療のIT化は成り立つのである。また、必ずしも全ての医療機関のレセプト情報を電子化する必要もない。過疎地の診療所や、これまで地域住民と密接な信頼関係を築き、その健康を支えてきた高齢医師などが、費用面や人員面でレセプトの電子化に対応できないがために診療をやめざるを得ない状況に追い込まれるなど、医療のあり方としては本末転倒である。これら小規模の手書きレセプト提出診療所は、医療機関ベースで全医療機関に占める割合では10%程度であるが、これらの診療所が提出するレセプト枚数は少なく、レセプト枚数ベースで見れば全医療機関の提出するレセプトの2~3%を占めるにすぎない(http://www.ssk.or.jp/rezept/hukyu.html)。よって小規模手書きレセプト提出診療所のレセプト情報が電子化されないことで、医療情報のデータベース化(分析)に与える影響は皆無といえるほど微小であり、これらの医療機関が廃止に追い込まれることで地域住民に与える影響の方が甚大である。

 府医はレセプトの電子化移行には決して反対を唱えているものではない。これは現場の医療機関の定期的なレセコン買い替え時に無理なく導入され、将来的にはこの電子化されたレセプトが増加するのは時代の趨勢と考えており、これらを集積して医師会としても診療側として、国の医療財政施策の判断指標に活用すべきとの考え方である。ただ今後は、保険者や国に集積されるレセプトデータの取扱い、このデータベースの利用につき、国民のレセプトを提出する診療側として監視してゆく必要があると考える。レセプトの内容は患者・国民の高レベルの個人情報であり、これを作成するのは医療機関である。国民の側に立ったレセプト活用について常に注視し、必要な際には医師会として発言し関与してゆく責務があると考えている。

 なお、日本医師会ではORCAプロジェクトの目的のひとつとして患者個人情報を含まない日本医師会独自のデータベース構築のために、会員の同意を得て、前述したORCA日レセユーザーから匿名のレセプト情報を集積する定点調査観測事業を開始している。これは国が提供するレセプト情報(ナショナルデータベース)に診療側として独自のデータで対峙し、医療側から公正な医療政策を提言する基礎データとして国の進める医療費適正化政策に対抗する非常に重要な武器となる。この定点調査観測事業をさらに強化するためにも各医療機関で府医の勧める日レセが導入され、このユーザーが拡大してゆくことが必要と考えている。

  B)社会保障カード(仮称)への対応
 国民にとって非常に重要な問題である年金手帳に医療保険証と介護保険証を統合した「社会保障ICカード」は前自公政権ではほとんど国民への周知や議論もされないままに準備が着々と進行し、全国数箇所で実証実験も始まりかけていた。しかし政権交代により現政権下では事業仕分け等によりこれは一旦中断され、「所得の把握を確実に行うための税と社会保障制度共通の番号制度」としての議論が国民の前にもオープン化されつつある。今後、この分野でもIT化導入が検討される可能性が高く、強い関心を持って注目してゆく。



Ⅳ: 医療安全に関する見解(事故調査制度等のあり方)
 政権交代によって、厚生労働省の「医療安全調査委員会設置法案(仮称)大綱案」が、そのまま国会で審議される可能性はなくなった。しかしながら不幸にして起こった医療事故の原因を追及するための第三者機関の設立は、医学の進歩のため、医療安全のために絶対に必要である。 現在、わが国においては、医療事故が発生した場合、医療機関からの届出もしくは患者ならびにその家族からの訴えにより、刑事検察が捜査を行い、その結果によって刑事処罰が加えられる。そして、刑事処罰に基づいて行政処分が科せられる。この一連の過程には専門家による原因究明のための分析や再発防止のための提言など、医療安全の向上に関する要素は全くない。そればかりでなく、医師が患者と共に病に立ち向かった結果、刑事訴追を受けるかもしれないという異常な事態が生じている。われわれ医師が医療現場において委縮することなく、もっとも正しいと考える医療行為を遂行できる環境を作ることが、医療崩壊を食い止めるためにも重要な課題である。
 医療安全を確保するために必要な制度とは、第一に医療が委縮へ向かわない制度であること、第二に原因の究明が明確になされ、再発防止に繋がること、第三に患者・家族だけでなく医療を受ける人が納得し、医療の信頼が維持されるものでなければならない。

 1)医療事故調査の在り方
 医療事故が起こった場合、院内調査がおろそかにされてはいけないことは、当然のことであるが、公平性、客観性を確保するためには、第三者による調査制度が必要である。調査機関は医療の専門家である医師によって構成されるべきであるが、どのように調査の透明性を確保するかは重要な課題である。そして調査の結果に基づいて再発防止策が講じられる仕組みが必要である。


 2)行政処分の在り方
 現状では司法判断の結果に基づいて行政処分が行われていたが、医療事故の責任の取り方としては、国家資格を持つ専門職としての責任を問うことが中心となるべきである。この際、刑事処分の可能性が医師のやる気を殺いで、医療崩壊に結びついたことを忘れてはいけない。すなわち、行政処分判断の明確な基準の作成と再教育を中心とした多様な処分類型が作成され、公正、公明な処分制度でなければならない。
専門家集団である医師会のプロフェッショナルオートノミーが最も発揮されなければならないと考える。


 3)患者救済
  患者救済の在り方は患者の要望に報いることである。患者の要望とは、①現状回復、②真相究明、③反省謝罪、④再発防止、⑤補償・賠償、⑥処罰といわれている。すべてをかなえることはもちろん不可能であるが、医療側と患者側の対話によって少しでも隙間を埋めることが患者の救済としてできることであり、また医療の信頼回復に貢献する。その手段としてADR(対話型)、無過失補償制度などの活用が検討されるべきである。



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【参 考】
○森洋一日本医師会会長候補オフィシャルサイト
  http://www.mori-yoichi.jp/

○森洋一日本医師会会長候補オフィシャルサイト「マニフェスト」
  http://www.mori-yoichi.jp/manifest.html

○森洋一日本医師会会長候補オフィシャルサイト「活動報告」
  http://www.mori-yoichi.jp/report.html











| ご意見 (0) | 2010.03.10, Wednesday 11:16 AM |



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