新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関するQ&A(Vol.2)
※Q21~Q35を追加しました!【3月25日更新】

~診療所の会員の皆様へ~

 3月10日時点での「新型コロナウイルス(COVID-19)感染症に関するQ&A Vol.2」を公開いたしましたが、その前後で会員の皆様から多くの質問が寄せられています。また府医ホームページの新型コロナ関連特設サイトに置きました「新型コロナウイルス関連お問い合わせフォーム」にも質問が寄せられ、逐次ご回答させていただいているところです。
 3月17日に『群馬県の70代医師が新型コロナウイルスに感染し、感染後の診療で患者67名と濃厚接触』のニュースを受けて、府医へのお問い合わせで「医師が発熱したときの対応」などの質問が増えています。
 今回、これらのご質問への回答集として、先のQ&A Vol.2の追補としてのQ&Aを作成いたしました。流行状況や対応策は、日々変化しておりますので、府医からのQ&Aは作成時点での一般的な注意点を示すものであることをお断りしておきます。
 また診療所、特に一般的な内科診療を想定しての内容になっておりますが、遵守すべきものというのではなく、あくまでも参考にしていただいた上で最終的には医療機関の責任において、落ち着いて日々の診療を守っていただきますようお願いいたします。
 内科以外のその他の科の会員の先生方にもご参考にしていただければ幸いです。
 なお、日本国内では現時点では患者増加は持ちこたえていますが、今後クラスターの感染源が分からない感染者が増え続けると、どこかで爆発的患者増加(オーバーシュート)を生じて医療体制が崩れることもあり得ます。災害時のBCP(事業継続計画)を立てるのと同様に、各医療機関におかれましては、スタッフと共に今後のフェーズに対応できるBCPを立てていただくことが重要になってくると思われます。日本医師会HPに「新型インフルエンザ等発生時の診療継続計画作りの手引き」が公開され、作成例も示されています(https://www.med.or.jp/doctor/kansen/novel_influenza/001711.html)。これを参考にしてCOVID-19仕様を個々の医療機関で作成していただくよう日医からの通知があり、会員の先生方にはすでにお願いしておりました。未だ作成されておられない場合は、診療科にかかわらず全ての医療機関での作成をよろしくお願いいたします。
会員の皆様におかれましては、今後ともご理解、ご協力、ご支援のほどを何卒よろしくお願いいたします。
2020年3月23日

(一社)京都府医師会 新型コロナウイルス感染症対策チーム



新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関するQ&A Vol.2(2020年3月25日)~京都府医師会編集~


Q1.日本におけるCOVID-19の感染流行の状況について

 感染が拡大する前の水際対策期を過ぎて、感染蔓延期に移行しつつあります。もはや、感染者を見つけ出して感染者の周辺を封じ込めるというのではなく、如何に重症者を出さないか、重症者のための治療の確保をどうするか、如何にハイリスク者を守るか、高齢者や介護施設での集団発生を如何に防ぐか、の対策を講じる時期になっています。感染者の増加に伴い重症者も増えますが、重症者のための病床の確保をしつつ、今後はPCR検査(SARS-CoV-2(新型コロナウイルス)核酸検出)は重症者を優先して、さらに院内感染を防ぐことに主眼が置かれていきます。

「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)―水際対策から感染蔓延期に向けて」(日本感染症学会・日本環境感染学会、2月21日)
「地域で新型コロナウイルス感染症の患者が増加した場合の各対策(サーベイランス、感染拡大防止策、医療提供体制)の移行について」(厚労省対策推進本部、3月1日)

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Q2.症状の軽い人からの感染拡大について

 これまでは症状の軽い人からも感染する可能性があると考えられていましたが、国内のデータの分析から明らかになってきたことは、症状の軽い人も、気づかないうちに感染拡大に重要な役割を果たしてしまっていると考えられます。なかでも、若年者は重症化する割合が非常に低く、感染拡大の実態はみえにくいですが、結果として中高年層に感染が及んでいると考えられます。

「新型コロナウイルス感染症対策の見解」(新型コロナウイルス感染症対策専門家会議)

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Q3.クラスターとは

 クラスターは患者集団のことです。一定条件を満たす場所において、一人の感染者が複数人数に感染させた事例が報告されています。具体的には、ライブハウス、スポーツジム、屋形船、ビュッフェスタイルの会食、雀荘、スキーのゲストハウス、密閉された仮設テントなどです。このことから屋内の閉鎖的空間で、人と人とが至近距離で、一定時間以上交わることによって、患者集団(クラスター)が発生する可能性が示唆されています。クラスターが次のクラスターを生むことで、感染の急速な拡大を招くと考えられています。厚労省では、対策本部クラスター対策班が設置され、各地でのクラスターの分析とその後の広がり防止対策を行っています。
 なお、これまでに国内で感染が確認された方のうち重症・軽症にかかわらず約80%は、他の人には感染させていないと報告されています。

「新型コロナウイルス感染症対策の見解」(新型コロナウイルス感染症対策専門家会議)

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Q4.重症化する人たちとは

 COVID-19で重症化するリスクが高いのは、高齢者、基礎疾患(糖尿病、喘息やCOPD等の呼吸器疾患、心疾患、免疫抑制剤あるいは抗がん剤治療にある者、妊婦など)を有する人です。
 これまでのデータから判ってきたことは、感染が確認された症状のある人の約80%が軽症、14%が重症、6%が重篤となっています。重症化した人も約半数は回復しています。重症化する患者さんも、最初は普通の風邪症状(微熱、咽頭痛、咳など)から始まっており、その段階では重症化するかどうかの区別はつきにくいのです。
 軽症では風邪症状が出てから約5~7日程度で治まりますが、重症化する患者さんは、7~9日目ころから急速に症状が悪化し、肺炎に至っています。
 言い換えれば、ハイリスク者以外は一般市民が怖れるほどの危険の高いものではなく、今後、長期的な対応のなかで、かかりつけ医が患者さんにそのことを説明することが重要です。

「新型コロナウイルス感染症対策の見解」(新型コロナウイルス感染症対策専門家会議)

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Q5.風邪症状のある患者さんから電話相談を受けた場合、受診させてもよいでしょうか

 2月25日発表の政府の基本方針に基づいて、軽い風邪症状の方は原則として自宅療養することを勧めてください。37.5度以上の発熱が4日以上続く場合(高齢者や基礎疾患のある方、妊婦は2日程度)、または倦怠感や息苦しさ(呼吸困難)がある場合は、帰国者・接触者相談センターへ連絡するよう説明してください。
 医師が診察すると判断した場合は、受診時に患者さんにマスク装着するよう指示してください。また、診察時間を調整して、受診させるなどの対応をしてください。

「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)―水際対策から感染蔓延期に向けて」(日本感染症学会・日本環境感染学会、2月21日)
「地域で新型コロナウイルス感染症の患者が増加した場合の各対策(サーベイランス、感染拡大防止策、医療提供体制)の移行について」(厚労省対策推進本部、3月1日)

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Q6.発熱している風邪症状の患者さんが、直接、医療機関を受診した場合、診察をお断りできますか

 受付段階で発熱があると判明した場合は、診察する前に原則として自宅療養を勧めてくださいQ5.参照)。もし受付が済んでしまった場合は、マスク装着をしていただき、別室など他の患者さんと接触を避けるために動線を分けるようにしてください。

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Q7.帰国者・接触者相談センターへの連絡はどのような場合ですか

 Q5.で述べた体調不良の患者さんが、直接、帰国者・接触者相談センターに連絡すると、感染の可能性等を確認し、帰国者・接触者外来に誘導するか、自宅での経過観察を継続するかの判断をされます。
 医療機関から相談するのは、医師がCOVID-19の疑いがあると判断した場合で、帰国者・接触者相談センター(京都市では医療機関から感染症対策窓口へ)から帰国者・接触者外来でのPCR検査へ繋げることになります。
 府医も、検査が必要な方には、スムーズにPCR検査が実施できるよう、京都府・市と協力体制をとって取り組んでいます。

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Q8.医療機関の入口に「発熱のある人は診察できない」と掲示できますか。応召義務に反しますか

 COVID-19を含めて感染症に対して標準予防策を講じることができない(サージカルマスクや手指アルコール消毒薬などが十分でない)場合、構造的に他の患者さんとの距離を保つことができない場合などには、診療ができる態勢ではないので、応召義務に反することにはなりません。診察できない旨を掲示する場合は、前述の理由を併せて記載することと、Q5.の自宅療養あるいは帰国者・接触者相談センターへの連絡についても記載してください。

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Q9.体調を崩した方が医療機関を受診した場合に、医師や看護師等が診察の際に注意することは何でしょう

 COVID-19感染の疑いのある方が受診した際には、COVID-19の類似症に当たらないか注意して診察することが重要です。京都府・府医を通じて周知している疑似症の基準に沿った診察をお願いします。
「疑似症サーベイランスの運用ガイダンス(第三版)」
https://www.niid.go.jp/niid/images/epi/PDF/gijisyo-gildeline-200110.pdf

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Q10.感染の疑いのある患者を診察する際、医療者はどのような準備や装備が必要ですか

 サージカルマスク装着と手洗いなどの衛生対策を心がけてください。手指などの皮膚の消毒には消毒用アルコール(70%)が、物品などの消毒には次亜塩素酸ナトリウム(0.1%)が有効であることが判っています。なお、診察した患者が後日にCOVID-19感染と判明しても、標準予防策を行って診察していれば濃厚接触とはみなされません

「新型コロナウイルスに関するQ&A(医療機関・検査機関の方向け)(厚生労働省、3月4日)
「新型コロナウイルス感染症に対する感染管理」(国立感染研究所 国際感染症センター、3月5日)
 感染対策についての詳細は国立感染症研究所のHP「新型コロナウイルス(2019-nCoV)」に掲載の関連するガイダンスをご参照ください。
 https://www.niid.go.jp/niid/ja/diseases/ka/corona-virus/2019-ncov.html

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Q11.感染の疑いのある患者の届け出は必要ですか

 新型コロナウイルス感染症流行地域からの帰国者など、集中治療その他これに準ずるものが必要な場合や臨床症状から肺炎と診断され、かつ、特定の感染症と診断ができない場合は、直ちに疑似症として届け出る必要があります。現時点では、帰国者・接触者外来の医療機関ないしそれに準じる医療機関から届け出がされることになります

「新型コロナウイルスに関するQ&A(医療機関・検査機関の方向け)(厚生労働省、3月4日)

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Q12.疑い患者が帰国者・接触者外来あるいはそれに準じる医療機関ではない施設を受診した際の対応は何ですか

 帰国者・接触者相談センターあるいは保健所に連絡の上、検査の実施ができる帰国者・接触外来の医療機関への誘導をお願いしてください

「新型コロナウイルスに関するQ&A(医療機関・検査機関の方向け)(厚生労働省、3月4日)

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Q13.COVID-19感染者の診療を行った場合は、濃厚接触者に該当しますか

 医療機関や検査機関で、標準予防策を講じて適切な感染防護具などを使用している場合は、濃厚接触者に該当しません。もし、感染防護具が破れていたなどの「適切でない」と考えられる行動があった場合は、個別に判断されますので、その医療機関を通じて保健所へご相談ください。
 インフルエンザ等の診断のために検体採取をされる場合においても、後日患者さんがCOVID-19感染者と判明し、標準予防策が不適切であれば医師が濃厚接触者となる可能性がありますのでご注意ください

「新型コロナウイルスに関するQ&A(医療機関・検査機関の方向け)(厚生労働省、3月4日)

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Q14.医療機関や検査機関でCOVID-19患者の診察を行った後は、就業を控えなければいけませんか

 適切に感染予防の対応(標準予防策、感染防護具着用など)をして診療した場合、現時点では濃厚接触者に該当しないと判断されますので、就業を控える必要はありません。

「新型コロナウイルスに関するQ&A(医療機関・検査機関の方向け)(厚生労働省、3月4日)

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Q15.COVID-19感染者に診療を行った場合、診察医はPCR検査を行ってもらえますか

 Q13.の通り、適切な感染対策を講じていた場合は、感染する可能性が低いと考えられるため、京都府では原則としてPCR検査は行われません。発熱の患者さんを診察される場合はマスク装着等適切な感染対策を必ず講じてください。検体の採取は帰国者・接触者外来で行いますので、一般医療機関(診療所)では行わないでください

「新型コロナウイルスに関するQ&A(医療機関・検査機関の方向け)(厚生労働省、3月4日)

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Q16.医療機関でPCR検査を実施する条件は

 検体採取によってエアロゾルが発生する可能性があるため、周囲に感染を拡大させる危険性があります。適切な感染予防策(N95マスク、ゴーグル、防護服、グローブなど)のもとでなければ実施できません。また安全な検体搬送体制が必須です。
 これらの要件を満たさない限り一般医療機関(診療所)での検体採取はできません

「医療機関における新型コロナウイルス感染症への対応ガイド 第2版」(日本環境感染学会)

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Q17.医療機関の診療で、COVID-19に感染した場合はどうなりますか

 一般の患者さんと同様に入院となります。

「新型コロナウイルスに関するQ&A(医療機関・検査機関の方向け)(厚生労働省、3月4日)

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Q18.医師がCOVID-19に感染して、休業を余儀なくされた場合、休業補償はありますか

 休業補償保険(*)に加入していれば医師本人は補償されますが、看護師等のスタッフについては特約加入が必要です。しかしながら現時点では、特約にCOVID-19は含まれていません。保険の定款では感染症1類から3類について記載されていますが、COVID-19は2類相当であり、今後はCOVID-19を含めるよう日医から要請をしています。まず個々の医療機関の契約中の保険については再検証をしてください。

(*)(有)KMAで取り扱っていますのでご相談ください。
「第2回都道府県医師会新型コロナウイルス感染症担当理事連絡協議会」(日本医師会)

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Q19.PCR検査は行政検査と保険適用の二本立てとなりましたが、違いは何ですか

 COVID-19が指定感染症となってから、PCR検査は行政検査として、帰国者・接触者外来において検体採取がおこなわれています。
 今回PCR検査に保険適用がされましたが、従来とおり、京都府では行政検査も保険適用検査も帰国者・接触者外来でのみで行います。今後、患者の増加に加えて帰国者・接触者外来が拡充される方向で調整されています。

「新型コロナウイルス核酸検出の保険適用に伴う行政検査の取り扱いについて」(厚労省健康局、3月4日)
「新型コロナウイルス核酸検出の保険適用に伴う新型ウイルス感染症に対応した医療体制について(依頼)」(厚労省対策推進本部、3月4日)

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Q20.かかりつけ医の判断でPCR検査を一般診療所でできますか

 PCR検査は帰国者・接触者外来のみで行います。

「新型コロナウイルス核酸検出の保険適用に伴う新型ウイルス感染症に対応した医療体制について(依頼)」(厚労省対策推進本部、3月4日)

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Q21.Q1.で感染蔓延期に移行しつつあると記載されていますが、水際対策は終わりますか

 Q&A Vol.2を作成した後の3月11日にWHOはCOVID-19感染状況を「パンデミック」と評価しました。3月18日現在COVID-19感染国は150か国以上で、世界的に急速に広がりをみせています。日本国内では急速な増加ではないにしろ感染蔓延期に移行しつつあることは事実です。しかし水際対策は終了するのではなく、むしろ諸外国での感染拡大と感染者急増により、海外からの帰国者が日本に持ち込むようになっていますので、再度水際対策の強化が行われています。
3月18日に政府の対策本部は検疫の強化やビザの制限等の水際対策強化に係る措置を発表し、これらを総合的に判断した外務省は感染症危険情報をレベル1に引き上げ、全世界に対して発出しました。
 今後の診療に当たっては、海外渡航歴に注意を払ってください。

「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律第12条第1項及び第14条第2項に基づく届出の基準等における新型コロナウイルス感染症に関する流行地域について」(厚労省、令和2年3月18日)
「感染症危険情報(レベル1):全世界に対する感染症危険情報の発出」(外務省海外安全ホームページ)

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Q22.医師が37.5度以上の発熱、感冒症状が出た場合、診療を休むべきか

 国の基本方針で一般市民は自宅療養することが求められている状況であり、医師であってもこれに従わねばなりません。
 医師は感染に対するハイリスク者であることに留意した上で、Q24.に示す標準予防策や環境消毒を行うことを日頃から心がけてください。

「新型コロナウイルス感染症対策の基本方針」(新型コロナウイルス感染症対策本部)
「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療所・病院のプライマリ・ケア 初期診療の手引き Ver.1」((一社)日本プライマリ・連合学会、2020年3月11日公開)

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Q23.医院の職員が感冒症状や発熱がある場合は

 Q22.と同じく、当該職員には自宅療養していただかねばなりません。普段から職員の健康管理を兼ねて出勤の前後での体温測定とその記録を行い、体調に変化があった場合は、すみやかに院長あるいは感染管理担当者に報告する体制を作ることが望ましいです。
 業務に復帰する時期は、当該職員の経過や体調を考慮して、院長が判断します。

「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療所・病院のプライマリ・ケア 初期診療の手引き Ver.1」((一社)日本プライマリ・連合学会、2020年3月11日公開)
「新型コロナウイルス感染症COVID-19 診療の手引き 第1版」(厚労省、新興・再興感染症及び予防接種政策推進事業)

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Q24.感冒症状で受診した患者が、後日COVID-19陽性者と診断された場合の対応は

 保健所から患者の受診状況についての問い合わせがありますので、受診時の状況説明を含めて保健所の指示に従ってください。Q10.Q13.で説明したとおり、医師および医院職員が標準予防策(サージカルマスク、手指の消毒など)を講じて診療し、後述する施設内の適切な消毒がおこなわれていれば、濃厚接触は発生しなかったと判断されますので、自主的な就業制限や施設の使用制限を行う必要はありません。
 普段から患者が触れやすい場所(ドアノブ、洗面所蛇口、ゴミ箱やその周囲、など)を消毒用エタノール(アルコール濃度70%以上)あるいは薄めた次亜塩素酸消毒液(適正濃度500ppm・0.05%)で消毒しておくことが必要です。なお、環境消毒の基本は清拭であり、噴霧消毒は不確実ですので現場対応で徹底してください。飛沫は時間経過で水分が蒸発して飛沫核となりエアロゾル感染を生じる可能性があるため、患者が咳やくしゃみをした場合には、迅速に消毒することが大切です。

「新型コロナウイルス感染症が疑われる者の診療に関する留意点について」(日本医師会、2020年3月11日)
「日本医師会 新型コロナ通信 第5号」(日本医師会、2020年3月19日)
「第4回都道府県医師会新型コロナウイルス感染症担当理事連絡協議会」(日本医師会、2020年3月19日)

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Q25.医院の職員が後日、COVID-19感染者と判明した場合の対応は

 医院の他の職員が濃厚接触者と判定される可能性が高く、また状況によっては医師も同様の扱いとなる可能性があります。濃厚接触者は積極的疫学調査の対象となり、14日間は自宅待機での経過観察となるため、出勤はできません。
 また、患者・職員にかかわらず陽性者が発生した場合、保健所等の指導の下で消毒等を行うまでは施設の使用を自主的に制限することになります。ただし、その範囲は必ずしも施設全体ではなく、陽性者の動線上にない、またQ24.の通りに十分に消毒されているなど感染リスクが低いと当該医療機関の管理者が判断した部分については、使用を継続できます。

「新型コロナウイルス感染症が疑われる者の診療に関する留意点について」(日本医師会、2020年3月11日)
「第4回都道府県医師会新型コロナウイルス感染症担当理事連絡協議会」(日本医師会、2020年3月19日)

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Q26.医師の家族がCOVID-19感染者と診断された場合の対応は

 陽性者の家族は濃厚接触者となることがほとんどです。医師は濃厚接触者と判断されますので、Q25.と同じく14日間の健康観察期間が必要となります。医院の休業を行うかどうかは、保健所等と協議の上、お決めください。

「新型コロナウイルス感染症COVID-19 診療の手引き 第1版」(厚労省、新興・再興感染症及び予防接種政策推進事業)

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Q27.診察着は洗う前に消毒しなければなりませんか

 コロナウイルスはエンベロープを持つRNAウイルスであり、熱・乾燥・エタノール・次亜塩素酸ナトリウムに消毒効果が期待できます。基本的には診察着を洗う前の消毒は必要ありませんが、洗うことで付着している可能性のあるウイルス等は落とすことができます。

「新型コロナウイルス感染症COVID-19 診療の手引き 第1版」(厚労省、新興・再興感染症及び予防接種政策推進事業)

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Q28.COVID-19に対する治療薬

 現時点では、COVID-19に対する抗ウイルス薬による決定的な治療法はなく、重症あるいは重篤な患者に人工呼吸器やECMOを用いた対症療法が主体です。
 種々の薬剤投与が試みられていますが、まだ決定的な治療効果が証明されていません。

「新型コロナウイルス感染症COVID-19 診療の手引き 第1版」(厚労省、新興・再興感染症及び予防接種政策推進事業)

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Q29.COVID-19のワクチンは

 現在、各国でCOVID-19のワクチン開発が急ピッチで進められています。同じコロナウイルスであるSARSとMERSでもワクチン開発が行われましたが、いずれも有効なワクチンはできていません。COVID-19で有効なワクチンができるかどうかまだ分かりませんが、実用化されるには1年以上かかると思われます。

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Q30.サージカルマスクとその他のマスク(布マスク、花粉症用など)との違いは

 医療用マスクには、ASTM F2100-11(Standard Specification for Performance of Materials Used in Medical Face Masks. 2011)という規格基準が定められています。細菌濾過率(細菌を含む平均約3μmの粒子が濾過された率)、微粒子濾過率(平均0.1μmの微粒子が濾過された率)、呼気抵抗、血液不浸透性、延燃性によってレベル1~3の3クラスに分類されています。細菌濾過率と微粒子濾過率はそれぞれ95%以上がクラス1で、クラス2と3はそれぞれ98%以上です。ウイルス粒子は0.1μmで、飛沫核は5μm未満、飛沫は5μm以上ですから、飛沫を防ぐにはこのクラス1~3でほぼ可能と言えます。但し、エアロゾル発生の際にはN95マスクが必要になります。
 スギ花粉は20~40μmでこれを濾過できる花粉症マスクで前述の規格に合わないものや、手作りの紙マスクや布マスクでは、これらの微粒子濾過ができないため、サージカルマスクと同等とは扱われない可能性があります。

「各PPEの規格基準」(MedicamSARAYA、(株)サラヤ医療従事者向けサイト)

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Q31.標準予防策として手指消毒をしたいのですが、擦式手指アルコール消毒薬や消毒用アルコールそのものが品薄あるいは欠品状態です

 標準予防策としての手指衛生の基本は、手洗いと手指消毒です。アルコールによる手指消毒ができない場合は、患者に直接触れるあるいは鼻腔や咽頭からの検体採取の際には手袋装着をし、外してからしっかりとした手洗い(30秒以上)を行うことが必要です。後日COVID-19感染者に接触したことが判明した場合、この方法で手指消毒ができているかどうかは、保健所等の判断になります。

「標準予防策と接触予防策-手洗い-」(ヨシダ製薬病院感染、院内感染対策学術情報Y’s Square)

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Q32.標準予防策のための衛生資材がなくなってきました。インフルエンザなどの迅速検査をおこないたいのですが

 インフルエンザなどの感染症を疑って検体採取をした患者が後日COVID-19感染者と判明した場合、予防策ができていない医師は濃厚接触者として扱われます(Q24.)。インフルエンザや溶連菌感染など、鼻腔・咽頭から検体を採取する際に、サージカルマスク装着、眼の保護(アイシールド、ゴーグルなど)、手袋、ガウン(長袖ガウンが不足の場合はエプロン可)、手指衛生をしていれば濃厚接触に相当しませんので検体採取は可能です。これらの感染予防策ができない場合は、迅速検査は行わずに臨床診断だけで処方することは可能とされています。衛生資材がない場合は、一般診療所では迅速検査は行わないでください。迅速検査が実施できないためインフルエンザの除外診断ができないがCOVID-19も疑われるときは、医師から帰国者・接触者相談センターに連絡の上、ご相談ください。

「新型コロナウイルス感染症が疑われる者の診療に関する留意点について」(厚労省対策推進本部、2020年3月11日)
「新型コロナウイルス感染症が疑われる者の診療に関する留意点について」(日本医師会、2020年3月11日)
「新型コロナウイルス感染症に対する感染管理」(国立感染研、国際感染症センター、改訂2020年3月19日)

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Q33.接触感染の対策は

 ヒト呼吸器コロナウイルスの感染様式では、くしゃみなどの飛沫での感染よりも、ティッシュなどで鼻をかむ際に鼻を触った手がウイルスで汚染され、その手でドアノブなどの物を触り、そこに付着したウイルスが物を介して別の人の手にうつり、その手を顔面にもっていくことで感染(fomite transmission)が成立します。物の上でどれくらい感染性が保持されるかについては、従来3時間程度と言われていましたが、プラスティックなどの表面で3日程度、痰や糞便では5日、尿中で10日です(中国SARS対策委員会)。鼻汁や気道粘膜からの分泌物など粘性のある生体成分に包まれた状態では、表面が乾燥しても内部のウイルスの乾燥は限られ、感染性は安定していると思われます。
COVID-19も、物を介する感染を防ぐためには、「顔に手を持って行かない(特に鏡の前で無意識に顔面や毛髪を触ることに注意)」「手の消毒や手洗い(手袋を外した後も)」が重要です。また、感染者から出た咳や痰、下痢便などウイルス量が多い排泄物が付着した物、見かけ上乾燥している物も感染源となりますので、Q24.で示したような消毒が必要です。

「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のウイルス学的特徴と感染様式の考案」(Web医事新報、日本医事新報社)

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Q34.Q5.の帰国者・接触者相談センターへの相談の目安が厳しいのでは

 Q5.で示したとおり、帰国者・接触者相談センターに相談する目安は「風邪の症状や37.5度以上の発熱が4日以上続く」「強いだるさ(倦怠感)や息苦しさ(呼吸困難)がある」こととしています。この2条件が揃わなければならないということではなく、どちらかの条件に当てはまる人には、帰国者・接触者相談センターに相談するよう説明して、帰国者・接触者外来への受診調整を行うようにしていただいて構いません。
 また目安で「強い倦怠感や呼吸困難」があれば、「熱が4日以上」続くことが必要というわけではなく、直ちに帰国者・接触者相談センターに相談してください。
 さらに「高齢者」などの重症化しやすい人たちについては、「風邪の症状や熱が2日程度続く」まで待たねばならないという意味ではなく、たとえ2日程度続いていなくても、相談のあった状況に応じて柔軟な対応をしてください。

「新型コロナウイルス感染症についての相談・受診の目安について」(厚労省、対策推進本部、令和2年3月22日)

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Q35.Q5.の帰国者・接触者相談センターへの相談の目安で自宅待機していた人が軽快してきた時の扱いは

 「風邪の症状や37.5度以上の発熱が4日以上続く」ことが目安のひとつですが、3日以内に解熱した場合、風邪の症状が増強しなかった場合は、COVID-19感染でなく普通感冒などの可能性があります。Q4.で示したように重症化する人では最初は軽い症状でも徐々に症状が悪くなり7日目頃から急に悪化します。自宅待機後3日以内に解熱した場合、職場に復帰させるタイミングの目安は、各種薬剤の内服のない状態で、発熱、咳、喀痰、下痢、全身倦怠感などが消失してから48時間が望ましい、とされています。この条件で(症状消失を0日として3日目から)復帰が可能となりますので、職場や学校に相談するように指導してください。

「新型コロナウイルス感染症対策の見解」(新型コロナウイルス感染症対策専門家会議)
「新型コロナウイルス感染症についての相談・受診の目安について」(厚労省、対策推進本部、令和2年3月22日)
「新型コロナウイルス情報 企業と個人に求められる対策」(日本渡航学会、日本産業衛生学会)

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