厚生労働省 新型コロナワクチン 予診票の確認のポイントVer1.0 千葉大学病院公式チャンネル 感染対策教育動画「ワクチン希釈の手順 奈良県立医科大学附属病院 臨床研修センター 日本プライマリケア学会 BMIからアセスメントする筋肉内注射等の適切な針刺入深度の検討 You Tube動画(会場での流れや接種手技を示したもの) 概要リーフレット(ワクチンを安全に接種するための注意とポイント) 新型コロナウイルス感染症に係る予防接種の実施に関する医療機関向け手引き(2.0版) 日本アレルギー学会「アナフィラキシーガイドライン」

米国におけるmRNA COVID-19ワクチン接種後のアナフィラキシーの報告- 2020年12月14日~2021年1月18日(JAMA 2021.2.12)

ファイザー:9,943,247 投与
モデルナ: 7,581,429 投与


アナフィラキシーとは、「アレルゲン等の侵入により、複数臓器に全身性にアレルギー症状が惹起され、生命に危機を与え得る過敏反応」と定義される。「アナフィラキシーに血圧低下や意識障害を伴う場合」を、アナフィラキシーショックという。以下の3 つの項目のうちいずれかに該当すればアナフィラキシーと診断する。薬剤性アナフィラキシーは、医薬品(治療用アレルゲンなども含む)により生じるもので、医薬品投与直後~30 分以内に発症することが多い。これまでの報告でも,新型コロナウイルスワクチンもによるアナフィラキシーも投与から15分〜30分で発症することが多いとされている。

1. 早期発見と早期対応のポイント

(1)副作用の好発時期

医薬品の投与開始直後から10 分以内に生じることが多く、概ね30 分以内に症状があらわれる2。一般には医薬品の再投与時に発現することが多い。注射薬(特に血管内投与の場合)では症状発現が早く、経口薬の場合は吸収されてからアレルギー反応が生じるため症状発現がやや遅れて出現することがある。

(2)患者側のリスク因子

年齢に関連する因子として乳幼児、思春期・青年期、妊娠・出産、高齢者、合併症として喘息などの呼吸器疾患、心血管疾患、マスト細胞症、アレルギー性鼻炎、湿疹、精神疾患は重篤化の因子となり得る。またβ遮断薬、ACE 阻害薬など一部の薬剤、アルコール、運動、急性感染症、精神的ストレス、旅行などの非日常的な活動、月経前状態などは症状を増幅させる可能性がある。

(3)投薬上のリスク因子

あらゆる医薬品で発症する可能性がある。造影剤、血液製剤、抗菌薬、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)、抗悪性腫瘍薬などで多い。過去に複数回、安全に使用できた薬剤でも発症することがある。また抗悪性腫瘍薬などでは初回投与時から発症することがあり、注意が必要である。

(4)患者や家族等、並びに医療関係者が早期に認識しうる症状

初発症状は、じんま疹や掻痒感、皮膚の紅潮・発赤などのことが多いが、一部の症例では皮膚症状は先行せず、下記の症状から出現することがあるので注意が必要である。

(5)早期発見と早期対応

医薬品の投与後に上記の兆候が現れた場合、当該医薬品の投与を継続中であればただちに中止する。初期対応の手順を図に示す。医薬品の投与に関連してアナフィラキシーを疑う症状(表)を認めたら、0.1%アドレナリンの筋肉内注射(通常0.3~0.5 mL、小児:0.01 mL/kg、(最大0.3 mL))を行う。

2. 副作用の概要

医薬品によるものは年間で1000 例以上が発生していると推測される。頻度の多い医薬品は造影剤、血液製剤、抗菌薬、抗悪性腫瘍薬、解熱消炎鎮痛薬などである。発症機序は主として即時型(I 型)アレルギーによるが、一部の医薬品では初回投与時にもみられるなど、これで説明がつかないものも存在する。
(1)症状・アナフィラキシーが発症する臓器は多種である。通常、症状は、皮膚・粘膜、上気道・下気道、消化器、心血管系、中枢神経系の2 つ以上の器官系に生じる。アナフィラキシー患者では、皮膚および粘膜症状が80~90%、気道症状が最大70%、消化器症状が最大45%、心血管系症状が最大45%、中枢神経系症状は最大15%に生じる。薬剤性アナフィラキシーでは、致死的反応において呼吸停止または心停止までの時間(中央値)は5分との報告がある。アナフィラキシーの主な症状を下表に示す。

3. 判断が必要な疾患と判別方法

アナフィラキシーの症状に類似する疾患・症状と主な鑑別のポイントを下記に示す。
(1)気管支喘息:喘鳴、咳嗽、息切れを認めるが、掻痒感、じんま疹、血管浮腫、腹痛、血圧低下は生じない
(2)不安発作/パニック発作:切迫した破滅感、息切れ、皮膚紅潮、頻脈、消化器症状を認めるが、じんま疹、血管浮腫、喘鳴、血圧低下は生じない。
(3)失神:血圧低下を認めるが、純粋な失神による症状は臥位をとると軽減され、通常は蒼白と発汗を伴い、じんま疹、皮膚紅潮、呼吸器症状、消化器症状がない。

4. 治療方法:下記の(1)~(4)を同時に進めて対応する。

(1) 原因である可能性の医薬品の投与を継続中であれば、ただちに中止する。(ワクチンの接種は数秒であり,症状出現時はすでに投与は終わっていると考えられる。)

(2) 初期対応の手順に準じ、ただちに血圧測定を行い、パルスオキシメーターによる動脈血酸素分圧濃度測定、心電図モニター装着を行う。

(3) 応援(救急車)を要請する。

(4) 薬剤投与に関連してアナフィラキシーを疑う症状を認めた場合、0.1% アドレナリンの筋肉内注射(通常0.3~0.5 mL、小児:0.01 mL/kg、最大0.3 mL))を行う。注射の部位は大腿部中央の前外側である。筋肉注射後15 分たっても改善しない場合、また途中で悪化する場合などは追加投与を考慮する。※β遮断薬の服用者では出現しやすくなることが想定され、さらに治療に用いるアドレナリンの効果が減弱し、重篤化の恐れがある。前立腺肥大などに用いられるα遮断薬との併用では、アドレナリンのβ2 作用による血管拡張を介して血圧低下を助長する可能性があり、注意を要する。

(5) 血管確保し、同時に酸素投与を行う。ショック症状の出現や収縮期血圧の20mmHg以上の低下または90 mmHg以下のショックの場合は、生理食塩水またはリンゲル液などの等張液を5~10 分間で10 mL/kg を急速輸液する。改善がなければアドレナリン持続静注0.1~1μg/kg/分の投与を行う。

(6) 皮膚症状を緩和するために抗ヒスタミン薬の投与、呼吸器症状の改善のためにβ2 刺激薬の吸入、必要により酸素投与を行う。追加治療として、遷延性または二相性アナフィラキシーを予防する効果が期待されるステロイド薬投与を考慮する。

(7) 呼吸状態が不安定な場合は、気管挿管を考慮する。

(8) 発現症状別の対応のポイント以下に、発現症状別のポイントを補足するが、薬剤によるアナフィラキシーの治療はアドレナリンの筋注が第一選択である。

①皮膚症状のみの場合
じんま疹、血管性浮腫や顔面紅潮などの皮膚症状のみが認められた場合、H1 受容体拮抗薬を内服させた後、1 時間程度経過観察する。改善が認められたら、その後、2~3日分のH1受容体拮抗薬を処方したうえで帰宅可能である。改善がなければ、その後も病院内で経時的に観察する。

②消化器症状
腹痛、吐き気などの消化器症状が認められた場合、H1とH2受容体拮抗薬の点滴静注後1 時間程度経過観察する。改善が認められ、呼吸器症状や血圧の問題がない場合には、その後2~3 日分のH1、H2受容体拮抗薬を処方したうえで帰宅可能である。改善がなければ、その後も病院内で経時的に観察する。

③呼吸器症状
喘鳴や喉頭浮腫が認められたら、0.1%アドレナリン0.3~0.5 mL(小児:0.01 mL/kg、最大0.3 mL)の筋肉注射(大腿部が推奨される)とβ2刺激薬をネブライザーにて吸入するとともに、低酸素の兆候のある場合には直ちに、酸素投与(6~8 L/分マスク)を行う。改善が無ければ同様の手順を繰り返す。また、ステロイド薬としてヒドロコルチゾン(100~200 mg、小児では5 mg/kg)またはメチルプレドニゾロン(40 mg、小児では1 mg/kg)を点滴静脈注射する。上記処置にて治療抵抗性の場合,気管挿管や、喉頭浮腫が著明の場合には気管切開を考慮する。

④循環器症状
ショック症状や収縮期血圧20 mmHg以上の低下または90 mmHg以下のショック状態の場合、直ちに0.1%アドレナリン0.3~0.5 mL(小児:0.01 mL/kg、最大0.3 mL)を筋肉注射する(大腿部が推奨)。血管内の血漿や輸液量の50%は血管外へ流出するため、血管を確保し最初の5 分間は,生理食塩水またはリンゲル液10 mL/kg を急速輸液する。5 分後に改善がなければ0.1%アドレナリン0.3~0.5 mg(小児:0.01 mL/kg、最大0.3 mL) を追加投与し、輸液を継続する。更に、改善がなければ、アドレナリン持続静注(0.1~1μg/kg/分)を併用し、収縮期圧90 mmHg以上に保つように心がけ、2〜5 分間隔でvital sign をチェックする。遷延予防のためステロイド薬を6~8 時間間隔で点滴静脈注射する。H1、H2 受容体拮抗薬を投与することもよいとされる。

(9) 再発予防のために原因を特定し回避することが重要である。また第三者に明確にするために原因医薬品の名刺サイズのカードなどによる明記、情報共有、アドレナリン自己注射薬(エピペンⓇ)の処方及び使い方の指導が必要である。このため、アナフィラキシー発症後には少なくともアドレナリン自己注射薬(エピペンⓇ)を処方できる専門医に紹介・受診させることが合理的と考えられる。

奈良県立医科大学附属病院臨床研修センターより引用

筋肉注射マニュアル(v1.6)を公開しました。(医科)

お問合せ先

奈良県立医科大学附属病院
臨床研修センター
0744-22-3051(代表)

医療免責事項

この資料は、当院において臨床研修医の教育目的で作成したものです。
実際の筋肉注射手技については、各医療機関での判断と責任によって実施してください。
また特定の薬剤については、薬剤添付文章の内容(肩峰の3横指下で駐車するように記載されたもの 例:サーバリックス)と異なることにご留意ください。
著作権は当臨床研修センターに属しますが、上記の事項に同意いただいた上で各医療機関において自由にご利用ください。

奈良県立医科大学
整形外科・臨床研修センター 仲西 康顕

日本産婦人科感染症学会・産科婦人科学会の提言