2008年9月1日 突然の福田首相の辞任が報道された。???何故?安部前首相の辞任との相違は?1ヶ月前の突然の内閣改造は何だったのか?多くの方がそう思われたのではなかろうか?
 9月12日に臨時国会開会の日程が決まったところであったが、これが29日でも良いのではないかとの声もあると遅延策が報道されたところであった。今回の内閣改造は、公明党の意向を受け入れてのもので、麻生幹事長誕生についても、伊吹幹事長を嫌う公明党との確執と公明党の強い意志があるように報道されている。そこまでしての内閣改造1ヶ月での首相の辞任は、一部でテロ特措法の衆議院での再議決に公明党の賛成を得るのが困難であるとして、早い時期の衆議院解散総選挙を企図してのものとの声もある。いずれにしても、真相は我々にもうかがい知れないところである。いずれは必ず訪れる衆議院選挙における敗北の可能性が高いとしても、あまりにも公明党の意向に配慮しすぎているのではないか、そこまで政権にこだわるのか?という思いが強い。もちろん、野党に転落したときの辛酸を一度味わった方々には耐え難き物であることは十分に理解しているが、真剣に我が国の将来についてどうあるべきかの理念をお持ちであり、その信念に基づいて政治活動をしてこられたのであれば、ある意味それを理解してくれない国民に、もう一度しっかりと訴え議論していくという、青臭いかも知れないが政治の原点を持って対応して欲しかったといわざるをえない。かつての自民党ではあり得ない対応であるし、福田首相にしても、テロ特措法を何とか通すために、公明党の意向を受け入れて、麻生氏を幹事長に指名し内閣改造に踏み切ったにもかかわらず国会の開催時期についても思うに任せられなかった。また、森元首相を始めとする自民党の首脳も、次の衆議院選挙において何とか自公連立政権で政権を維持したい。何が何でも政権を離れることは出来ないという要求を連立政権維持だけのために受け入れる自民党の限界を見たような気がする。一方で、次の衆議院選挙で、例え勝利したとしても民主党が単独過半数を確保することは困難ではないかという声も多い。そうであるならば、自民、民主ともに自らの政権を維持するためにはその信念を曲げてでも公明党と組まざるをえないという現在の二大政党の限界を感じざるをえない。ある意味公明党がイニシャティブを取るわけであるが、我が国政党政治の限界を露呈するとともに多くの国民の政治不信を増幅することを懸念するのは私だけであろうか。
 福田首相は、公明党の反逆ないしは自民党と公明党の結束グル-プによる政権維持のための働きかけにより相当プライドを傷つけられたのであろう。一方で、福田首相自身も、昨夏の安倍首相の体調を理由とした辞任劇において、麻生総裁の誕生を忌避する町村派の意向を受けた、いわゆる棚ぼた式の首相就任であったことと本人のプライドの高さから辞任劇にいたった思われるが、二人続いた突然の首相辞任の原因に、巷間、二世議員の限界もささやかれている。
 さて、そこで、次期総裁選挙となるのだが、麻生氏は当然として、即座に対抗馬として名前が挙がった人が小池議員である。自民党は果たして真剣に国政を考えているのかと思わず叫んでみたが、ご本人は至極立候補にご執心なご様子である。その後、かなりの方に押されて与謝野氏が立候補となった。麻生、与謝野両氏を中心に総裁選挙が行われることになるのだが、その後、我々の国を一体どこへ連れて行こうというのか全くわからない人達が、総裁選挙をまるで幼稚園の学芸会か大学祭の舞台と勘違いしているかのように、我も我もと立候補しだした。確かに、国会議員になるからには、末は首相を目指していることはわかるのであるが、その準備はしてきたのか?目指す国家ビジョンはあるのか?2週間足らずで作成されるマニフェストは、本当に国の将来を考えて作られるのか?あまりにも身勝手で国民のことを考えていないのではないか?マスコミも芸能人を追いかけるかのように、片端から立候補しそうな議員に押しかけ煽っているようであるが、もう少しまじめな総裁選挙となるようにたしなめるような報道がなされるべきではないのか。
 医療崩壊の問題はもとより、年金問題や、教育、不況対策を始めとする経済対策、環境問題、外交、国際問題等々課題は山積している。常日頃からの真剣な政策の検討が必要なことは言わずもがなであるが、自らが国のトップに立つだけの力量があるかどうか胸に手を当てて考えるべきであろう。賑やかであれば賑やかな方がよい、誰にでも権利があるから立候補をと国民を愚弄するような総裁選挙だけはやるべきではない。申し訳ないが、名前も聞いたことの無いような方や特段実績を上げていないし大臣を経験したから程度では、この厳しい経済不況と難しい国際関係、資源問題を乗り切れない。次を睨んでとか、自由に発言できるのが自民党の良い所などということではなく、国の困難な状況をしっかりと認識し、総裁選挙に臨んでいただきたい。

京都府医師会長  森 洋一