平成21年7月21日、京都府医師会館において 第10回の医療安全対策委員会が開催された。
服部弁護士から裁判事例として「高度先端治療を行うため、専門病院に繋いだ医療機関における合併症発症リスクの説明義務について」報告され、説明義務違反が認められ200万円の賠償の判決となった事例に関して説明された。
「Y医科大学付属病院で左耳介部有棘細胞癌と診断された82歳男性患者が、Y医大から局所動脈内選択的注入療法(動注科学療法)の専門病院であるZ病院に転院して動注ポートを留意する手術を受けた後、脳梗塞を発症し死亡した事案につき、専門施設に説明を委ねたというだけでは不十分であり、専門病院に繋ぐ以上は、選択した療法の危険性などの情報を取得し、紹介する医師自らが説明する義務があるものとし、脳梗塞を発症するという合併リスクを説明していないY医科大担当医師に説明義務違反を認めた。同様に紹介をうけたZ病院についても同施術に伴う危険性は、別個に説明すべき義務を負っているものと説明義務違反を認めた。」
服部弁護士は、現在の裁判では紹介したY医大まで、患者が説明を受けていないと訴えると、自己決定権を侵害されたとして説明義務違反が認められてしまう。Y医大も説明したと主張したがカルテ記載がなかった。判決は、東京の地方裁判所の医療の専門の裁判官が判断している点が注目されると指摘した。
続いて医療メディエーター(医療対話仲介者)に関して、橋本理事よりその役割と愛媛県医師会が医療メディエターの養成の取組により紛争の減少につながった実例を紹介した。
医療メディエターは、院内での苦情や事故後の初期対応の際に、患者側と医療者側の対話の橋渡しをする役割である。専門的なスキルとして、@話を聞いて信頼関係を構築するスキル A紛争を分析して解決への道筋を見つけるスキル B不満を解決可能な課題に転換するよう促すスキル C対話の流れをスムーズにするスキル が必要で、第3者的な立場から両者の対話を促し、問題解決を図る。日本医療機能評価機構や早稲田総研などが養成講座を実施していると説明した。齋藤委員長は、患者に不満がある時は口に出して話すことだけで、不満が和らぐ場合ある。この時傾聴することが重要である。今後も紛争を未然に防ぐ医療メディエターについては注視していきたいとされた。松井理事からは、新医師会館にできるシュミレーションラボでは、コミュニケーションスキルについても学べる様にしたいと考えていると説明した。
第7回医療安全シンポジウム(平成22年2月27日)の開催について協議した。協議の結果、「医療安全とコミュニケーション」においてペイシェント・アドボケイトに詳しい東京医科歯科大学大学院 医療政策講座の岡本 左和子先生にシンポジウム当日の予定を確認しながら具体的に開催テーマの内容を検討していくことになった。 |