全部行うのが良い医療ではなく必要な検査や処置を選択することが重要

今泉先生（以下：敬称略）：
研修先を決めるにあたって、いくつかの病院を見学した中でも当院に惹かれたのは、研修医が各期２名と少数であることです。その分、先生方と密にコミュニケーションを取りながら指導を受けられるところに魅力を感じました。加えて当院が、「外国人患者受入れ医療機関認証制度」の認定を受け、外国人の診療を積極的に行っているところにも、興味がありました。
小林先生（以下：敬称略）：
私も研修医の数が少ないからこそ、手厚く指導していただけるだけでなく、より多くの経験を積めると期待し、当院に決めました。
今泉：
実際ローテーションで診療科を回っても、指導医の先生方が名前を憶えてくださり、別の診療科に移った後も、「今はどの科を回ってるの？」「今度、こんな処置をするから見に来ない？」などと気にかけてくださるので、心強いですね。
小林：
先生方が、想像した以上に熱心に指導してくださることに驚きました。わからないことを尋ねると、自分の仕事の手を止めて、時間を惜しまず説明してくださいます。
今泉：
臨床現場では、大学で勉強した通りにいかないことがたくさんあります。患者さんに薬の服用や検査の必要性を説明しても、納得してくださらない時は、どうすれば理解していただけるのか、伝える難しさを感じます。また当直では、救急に運ばれてきた外国人の患者さんを診る機会もあります。翻訳アプリを使って症状を聞いたり、こちらの意図を伝えることには、いつも苦心しています。
小林：
学生時代と一番違いを感じるのは、責任の重さです。模型を使った実習とは違い、生身の患者さんへの処置で失敗は許されません。呼吸器内科で初めて患者さんに処置した時は、手が震えるほど緊張しました。そうした手技以上に難しいのは、患者さんへの問診です。救急に運ばれてきた患者さんに問診しようとした時は、何から尋ねればいいのか分からず、言葉に詰まってしまいました。その時、指導医の先生が患者さんを見て即座に判断し、最小限の質問で必要な情報を聞き出すのを見て、「やっぱりすごいな」と思いました。
今泉：
同感です。指導医の先生から「検査であっても、あらゆる医療行為は基本的に患者さんに負担をかけることだよ」と言われ、学生時代に持っていた認識が大きく覆されました。全部行うのが良い医療ではなく、医療者が必要な検査や処置を考えることが重要だと知り、心に銘じています。