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事務局からの連絡

保険医療部より

平成18年度診療報酬改定 5月1日 副会長 安達 秀樹

1) 全てが変わった日, 2005年9月11日
大きな混乱を招いた平成14年のマイナス改定, 実質的にはマイナス改定といってもよかった平成16年のプラスマイナスゼロ改定を受けて, 日医診療報酬検討委員会は改めて「物と技術の分離と技術の適正な評価」を求めることを基本方針として来るべき18年度の診療報酬改定に臨んできました。中医協においても,基本問題小委員会において, 各技術の評価が精力的に検討されてきました。18年度診療報酬改定は, 平成15年3月の閣議決定による「医療の質と安全の向上」を基軸として, 技術の適正な評価を中心に医療費の再配分を含む診療報酬体系の抜本的な見直しの最初の改定になるはずでした。平成16年の規制改革・民間開放推進会議によるいわゆる(混合診療解禁) の議論に一応の決着がついた後, 平成17年になって経済財政諮問会議と財務省によって強力に主張されるようになった(医療費の総枠規制論) 等の財政的見地からの医療制度論はもちろんあったものの, 少なくともこれらとの綱引きが18年度診療報酬改定の全体像としては想定されていたと言って良いと思います。
 「郵政民営化」の是非を問うたはずの衆院選で296の議席を2500万の国民が小泉首相に与えた日から全ての政治プロセスが一変しました。郵政問題以外の部分についても全権委任というか, 白紙委任状を与えられたかのように政権は振る舞い始め, 誰もこれを止められなくなりました。医療制度も例外ではなく,厚労省は, 内閣に迫られて出した「医療制度構造改革試案」の中で, 医療費の総枠規制制度と免責制を外すのが精一杯でした。この試案を受ける形で政府・与党間協議の場として医療改革協議会が設置されましたがそれは形式だけで, 12月のある日, 首相が官邸にこもる土日に, 過去最大の診療報酬本体のマイナス改定率をという鶴の一声だけで, マイナス3.16%は決定されました。
2) 政権からのメッセージ
現在審議中の医療制度改革法案も含めて,今回の18年度診療報酬改定には非常にはっきりとした形で一定の方向が示されています。その最大のメッセージはやはり「経済・財政の見地から医療費を制御する」ということでしょう。今更, 解りきったことをといわれるかもしれませんが, 今回の改定の中に医療費削減策の一つとして盛り込まれた後発医薬品の扱いなどを見ると, このような姿勢があまりにも露骨に出ていると言わざるをえません。周知のように, 我国における後発品の医薬品としての認可基準は欧米に比べてかなり緩やかです。最大の問題は医薬品としての生物学的同等性が認可条件としては実質上求められていないことで, 事実, 日本臨床薬理学会にも後発品の同等性についての疑問に関する論文が提出されています。このような状態であるにもかかわらず, 今回, 医療機関が可とした処方箋については, 調剤薬局において後発品に変更してもよいということになったわけです。例えば, 上述の論文に示されたデータから推定される後発品の臨床効果の2つの違い, (過剰な効果) と(無効あるいは過小な効果) の結果として健康被害が起こった場合の責任はどこにあるのでしょうか。このような我国の後発品の現状を十分に知らされているとは言えない状態でもなお, 後発品を選択した患者の自己責任と言うのでしょうか。更にこの改定の告示の後, 間もなく厚労省は2つの通達を後発品の製薬業界に対して出しています。いわく, 「先発品の全規格を揃えること」, 「発売後最低5年間は供給を継続すること」。そもそも後発品使用についてずっと規制を続けてきた厚労省が, 数年前から突然一転して推進に転じた時からわれわれは一度もその方針変更の医学, 薬学的理由を聞いたことはありません。そんな中で, このような初歩的な追っかけ通知を出してまで後発品の使用拡大を進めようということなのです。平成15年3月の閣議決定による医療制度改革の指針「医療の質と安全の向上」は変更されたのでしょうか?我々医師は処方箋に後発品への変更可と書くことについてはきわめて慎重にならざるをえないでしょう。別に反体制的とか反政府的とかいうような立場をわざわざとらなくても, 普通に見れば, このような政策方針の見かけ上の乖離は与野党拮抗した状況にあった平成15年3月と, 平成17年9月衆院選与党圧勝後との違いによるものであることは誰の眼にも明らかであり, どのような詭弁を弄しても説明不能としか言いようのないこの閣議決定と今回改定との食い違いは,前者が建て前であり後者が本音ということになるのでしょうか。
 もう一つの大きなメッセージは療養担当規則の改定による「領収書発行の義務化」だと思います。改定の最終盤における中医協審議の中で, 一号側委員の一人である医療事故被害者団体の代表者の「医療事故の医療機関責任を明らかにするために必要」という主張に公益代表委員が賛成して決定に至ったといわれる議論のありようについては, それはそれで異論があります。本解説の主題ではないので簡単に言えば, 医療事故の問題は我々にとっても最重要課題であり徹底した検討が必要な問題であることはもちろんであるが, それを議論する場は中医協審議の中の診療報酬体系議論の部分ではないだろうということです。元々この領収書発行の主張は規制改革・民間開放推進会議が執拗に繰り返してきたものです。その意図は, 混合診療解禁による医療への資本の営利活動の参加を目論む同会議にとっては, 医療も商取引類似の性格を持つのだという印象を一般に定着させることは大変重要であったと考えられます。医療におけるインフォームドコンセントの議論と混同させたような主張のしかたは, むしろ恣意的と言ってもいいくらいでかなり乱暴なものでしたし,そこで言われてきた(消費者の視点) という今風の主張も, 同一の診療行為の単価が一律に決められている現在の保険診療のなかでは成立しないことも明らかでした。にもかかわらず, 上述のような全く意味の違う議論の中でこの領収書発行の義務が明記された裏には,医療を市場化したい人々の大きな力が働いたことを感じざるをえません。
3) 終わりに
 今回の改定には, 個々には一つ一つが大変大きな問題である項目が多数含まれています。その解説がこれかと多くの会員が言われるかもしれません。個々の問題はこれから適宜保険医療部会が解説や意見を展開することになると思います。本稿で最も重要と考えたことは, 現在の政権の医療制度に関する政策がこれまでの我国の政策の流れの中ではかなりひどく一方に偏り始めたという点であり, 今,医師会という組織はこれに対してどういうスタンスをとるのかが問われているということでした。
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